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東映作品はその歴史が示すとおりたくさんあります。その中で一番のお気に入りは? と聞かれたら、みなさんはどの作品のどのエピソードを選びますか? 作品の数、エピソードの数だけみなさんそれぞれの熱い想いがあると思います。今回はこの方の熱い想いをうかがいました。
[はじめに…]
最初、担当の方からこの原稿のお話を頂いたときは、どの作品について書けばいいのか結構悩みました。色々考えた挙げ句、僕にとって初ヒット担当作品となった『特警ウインスペクター』を選ばさせて頂きました。
【PROFILE】のなか・つよし=1966年生まれ。1987年超合金の生みの親・村上克司氏に憧れて(株)バンダイへ入社。東映ヒーローものを中心に男児玩具の開発を手がける。1997年「超合金魂」を手がけ、第一次野望達成。現在はキャラクタートイ事業部で女児キャラクターもテリトリーに加え、新世紀の新ヒーロー、新ヒロインの創造に奮闘中。
<放映データ>
放映:1990年2月4日〜1991年1月20日
全50回
香川竜馬(ファイヤー)
:
山下 優(横山一敏、野中博之)
ウォルター
:
声・平井誠一(岩田時男)
バイクル
:
声・篠田 薫(金田憲明、菊地寿幸)
正木俊介
:
宮内 洋
藤野純子
:
中西真美
小山久子
:
小栗さち子
[WSP-ウインスペクター-誕生秘話]
『宇宙刑事ギャバン('82)』をそのルーツとするいわゆる「メタルヒーローシリーズ」も、僕が入社したころ('87)はかなりマーチャン的に苦しくなっていて、シリーズ存亡の危機に陥っていました。『超人機メタルダー('87)』は特撮ファンには大人気でしたが、玩具はまったく稼げない状態で、次作『世界忍者戦ジライヤ('88)』の様なシリーズの統一感を欠く作品にも挑戦したりしていました。そして翌'89年、シリーズのリセット作品ともいえる『機動刑事ジバン』がスタートしたのです。『ロボコップ』や『あぶない刑事』のヒットを受けて企画されたもので、警視庁の田村直人刑事が実は特別機動捜査官のロボット刑事であるという設定のものでした。いつもは普通の人間なのに、変身すると突然ロボコップの様なギクシャクした動きになるという、今考えるとかなりヘンな部分もあったのですが、着ぐるみの造形的にはフルFRP(宇宙刑事は後ろがタイツ)のスーツを初めて製作し、ヒーローの駆るマシンやメカはリアル指向のデザインでまとめるという新時代のメタルヒーローのイメージはこの時既に出来上がっていました。子供達にも大旨好評で「DX電子ポリス手帳」といった ヒット商品も生まれました。(ちなみにこの年は、前年からの『仮面ライダーBLACK RX』と『高速戦隊ターボレンジャー』もヒットして、久しぶりに「東映ヒーローの逆襲」みたいな感じのする年でした)
そして作品がヒットすると必ず「シリーズ続行!」的な雰囲気になるもので、警察系メタルヒーローの2作目が企画される事になったのです。しかもシリーズ初の3人組! 正確にはひとりと2台のロボットなのですが。見た目はとにかく複数ヒーローのイメージです。当時企画に参加していた僕も「おぉ! ほとんど戦隊じゃん! いいのかなホントに? でも戦隊と売上逆転出来るかも!」とか若さ故の野心に燃えていたものです。ところが『ウインスペクター』はまったく新しい挑戦をしようとしていた作品だったのです。つまり……怪人が出ない!
倒すべき相手がいない! これにはもう社内外からの不安の声が爆裂していましたが、そうなった理由はちゃんとありました。当時の新聞の読者投稿欄に「仮面ライダーに出てくる怪人がグロテスクなので子供に見せたくない」的な内容のものがあって、これに対してのひとつの回答が『ウインスペクター』の基本設定となったのです。ウインスペクターが犯人逮捕のみならず、レスキュー活動までするのも、従来の勧善懲悪ヒーローもののあり方を見つめ直した結果だったのです。そして'90年2月4日、ニューヒーローがデビューしました。
[第1話を久しぶりに見て−−]
今回この原稿を書くために東映さんが試写会を催してくれました。サブタイトルは「赤ちゃん暴走!」。どなたがつけられたかわかりませんが、すごいタイトルです。このタイトルを宇宙刑事シリーズでもおなじみのナレーター・政宗一成さんが超低音でうなるのですごさ百倍です。
本編は悪の軍団が出ないかわりにのっけからカークラッシュのオンパレード。赤ちゃんを誘拐したアンドロイドR-24が運転するタンクローリーが、これでもかと言わんばかりにパトカーをはじき飛ばして大迫力! 正木本部長(東映ヒーローファン狂喜の宮内洋氏!)の命令で出動するサポートドロイド・ウォルターとバイクル(とても丁寧に造形されたスーツはすごいキレイ!)。この段階では主人公・香川竜馬はまだ出てきません。
カーチェイスの途中で子供がウォルターに駆け寄って応援したりするシーンもあって、ウインスペクターがすでに社会的に認知されている事がわかってちょっと新しいカンジ。
いきなりのタンクローリーの暴走シーンでは、何台ものパトカーをはじき飛ばす。
彼の登場に歓声をあげたファンも多い、正木本部長こと宮内洋氏。
冷静沈着なサポートロボ・ウォルター。過去のデータを元に事件の解決パターンを探る。
名古屋弁が衝撃のサポートロボ・バイクル。スピードのみならず力も強い。
見ているほうが照れてしまう、ウォルターを応援する女の子からのキス。ウォルターは敬礼でお返しをする。
後半、R-24の目的が判明しタンクローリーが研究所へ突っ込まんとする時、パトロールスコード(サイレンの音がアメリカ風なのがナイス!)で到着する竜馬。車内ですかさず「着化!」と叫びクラステクターを装着!(メタルヒーローのお約束である「造語で変身」を久しぶりに見せてくれます)主題歌と共に新ヒーロー・ファイヤーの大登場! タンクローリーに飛びつき、右腕に装備したマックスキャリバーでタイヤを攻撃! クラステクターの装着タイムリミットも迫る中何とかタンクローリーを阻止し、赤ちゃんも爆発の中から見事救出して大団円と思いきや、ターミネーターのごとく腕だけで迫ってくるR-24。それをスパッと腰から抜いたデイトリックM-2で撃破するファイヤー(スゲェかっこいいガンさばき。横山(一敏)さん、さすが!)。そしてすべてが解決して…出た! 出ました「必殺メット脱ぎ」! 本作品最高の大発明。怪人を倒すカタルシスを越えてあまりある壮快感! 今までのヒーローの掟を破る素面出し!(一部例外あり)ここにニュータイプヒーロー「レスキューポリス」のフォーマットがすべて出揃いました。いや、本当にお見事です。
10年前、初めてこのラッシュフィルムを見たときは、ウォルターとバイクルの動きがあまりにコミカルすぎないか? とかマックスキャリバーってタイヤを刺すだけの武器なのか? とか結構ショックを受けたりしたものでした。しかし作品がヒットし、商品が売れ出すとそんな心配はどこへやら……なのでした。
ウインスコードの中で座ったままの「着化!」。パーツごとに細かく装着されていく。
大きなお友達もそのおもちゃを欲しがった「マックスキャリバー」のレーザーソード。
彼こそが、特警ウインスペクター・隊長、警視正ファイヤー。
これこそが、ウインスペクターの見どころと言っても過言ではない、「必殺メット脱ぎ!」
[やっぱりオモチャの話]
はっきり言ってよく売れました。特に特警手帳やマックスキャリバーを中心とするなりきり装備シリーズは、売上の核としてヒットしました。アイテムの多くはシルバーとブラックを基調としていてかなり渋め(地味め)だったのですが、この当時はまだ玩具では珍しかったLEDをふんだんに並べてみたり、マイコンチップを搭載して色々なサウンドを出してみたり、作っている僕自身ものめり込んでウインスペクターらしさを追求していました。「DXファイヤーテクター」では竜馬役の山下優さん(お母さん達にホント、人気がありました)の声をそのまま商品の中に入れたりもしました(今じゃ当たり前の事なんですけどね)。極めつけは年末商戦の要となった「ギガストリーマー」で、商品そのものは言ってみればただのドリル! しかし電池でガンガン回ったり、ドリルの先端が開いてマニピュレータになったりする前人未到のギミックを内蔵し、別売りのマックスキャリバーと合体して最強の「マキシムモード」になるという、戦隊シリーズの二毛作をなりきり武器でやってしまう超絶アイテムでした。これまたよく売れて、生産が追いつかなくなるというありがちな展開に陥ったのでした。
もうひとつ忘れてならないのが「着化指令」シリーズと「DXウインスコード」です。そもそも実写ヒーローものはソフト人形以外あまりフィギュア商材は売れないのがジンクスになっていたのですが、聖闘士星矢的アーマー装着システムを持つこのシリーズは、番組の設定ともシンクロしたお陰でヒットしました。そしてそのフィギュアが乗るウインスコードもTV同様白いパトカーから赤いレスキューマシンに変形する完全変形もので、夏期商戦の目玉になっていました。
なんだかんだで『ウインスペクター』は『地球戦隊ファイブマン('90)』と同じくらいの売上を稼ぎ、僕自身オモチャの開発マンとしての自信をつけさせてもらった1年間でした。
特警ウインスペクター 「なりきり装備シリーズ」
特警ウインスペクター 「DXファイヤーテクター」
特警ウインスペクター 「着化指令シリーズ」と 「DXウインスコード」
特警ウインスペクター 「ギガストリーマー」
※これらの商品は残念ながら、現在はすべて生産中止となっています。
[最後に−−今日のおれからあしたの君へ−−]
こうして当時の事を思い返してみると、最近の自分の仕事に繋がっている様々な事象が『ウインスペクター』の中に見てとれます。
玩具開発面でいえば、今ではスタンダードになっているリアルサウンドやハイテク機能を満載した武器は、間違いなくこのころ定着したものですし、『仮面ライダークウガ』の「装着変身」シリーズは「着化指令」シリーズの再来にほかなりません。
作品的な面で言えば、レスキューものという意味で昨年の『救急戦隊ゴーゴーファイブ』で、よりパワーアップして映像化されていますし、リアル指向の警察ものという意味では『クウガ』の原型の様な気もします。エンディングの助監督のところに『クウガ』のパイロット監督・石田秀範さんの名前を見つけたとき、「あぁ、歴史は繋がっていて、それでいて少しずつ動いているんだなぁ」と妙に感動してしまいました。 思えば僕自身、10年前とは違って多くのキャラクターを同時に面倒を見る立場となり、それぞれのキャラクターの各担当が日々がんばってくれています。
東映さんの現場でも多くの若いスタッフが活躍し、作品を支えてくれています。時代は少しずつ動いているのはわかっていても、先人達が作り上げたものの中でもがいている、どうしていいかわからない若い人がいたとしたら、『ウインスペクター』のエンディングテーマを聴くことをおすすめします。−−今日のおれからあしたの君へ−−とても元気が出る歌です。かつての僕も「いつかオレが新しいヒーロー、作っちゃる!」と夢を膨らませていたのです。まだ夢の途中ですが、 これからもその夢を忘れずにがんばりたいと思っています。
(c)TOEI