他の映像作品がそうであるように、東映作品もまた驚く程たくさんの人達の手によって作り上げられています。その作り手達を知れば、自ずとその作品も見えてくるのではないでしょうか? そう考えると話を聞いてみたい人はたくさんいると思います。そこで、不肖未熟の身ではありますが、僕が会員の皆さんに成り代わり、いろいろな方にお話を伺っていきます。今回はこの方にターゲットを合わせました。皆さんの聞きたいことが、少しでも聞き出せていると良いのですが・・・・。

第7回 増岡 弘
(『百獣戦隊ガオレンジャー』ナレーター)-前編-
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  東京・練馬にある東映東京撮影所は最近、日々その姿を変えている。最近まであった歴史たっぷりのアフレコルームが、突如大きな溝を張り巡らされた基礎工事の土台に変わっていたり、趣ある木製のベンチと共に目にも優しい緑をその軒先にたたえていたスタッフルームは、だだっ広い更地になっていたりと、ほんの少し足を運ぶのを怠るとそこは自分の記憶する東映東京撮影所ではなくなっている。
 そんな中、比較的近年に改装された新しいアフレコルームのある4階建てのビルでは、音響関係の作業のほとんどが行われ編集機材も新しい物に切り替わったりしながら、これから建設される新しい建物と融合するべく、その建設をただ静かに見守っている。

   待ち合わせのアフレコルームへ入ると、その人はもう既に脚本を片手にセリフを練習中だった。ほぼ毎週決まったこの曜日、この時間にその人はやってくる。その芸歴の長さもさることながら、演じたキャラクターの多さ、またその有名さに、例え顔は知らなくても声さえ聞けば誰もが知っている今回の”あの人”は、『百獣戦隊ガオレンジャー』のナレーター・増岡 弘さんだ。


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 まずはそのアフレコ風景を拝見した。アフレコルームと言っても、こぢんまりとした所から今回のように映画の試写室のようなものまで千差万別だ。豪華な椅子が並んだその前にモニターテレビが3台と、それぞれマイクがセットされている。モニターには今回収録される第17話と第18話の映像が流されている。増岡さんはナレーターなので、むしろ全体の雰囲気が分かるようにと、シーンを限定せずに全編が流しっぱなしにされている。もちろん、キャラクターに合わせる芝居をするガオレンジャーのメンバーが録音するときは、その録音シーンの映像が流れる。
 増岡さんが入る前からアフレコ中だったガオレンジャーの面々が、休憩を終えてアフレコルームへ戻ってきた。ガラス越しのこちらのコントロールルームには、監督の渡辺勝也さんと助監督の塩川純平さんも戻ってきた。さあ、いよいよアフレコ開始だ。
 本編の録音はどうやら途中だったらしいが、まずはナレーション録りから再開。
 真ん中のマイクの前に立った増岡さんはにこにこした優しそうなおじさん。だが、ひとたびその声を発すると…
「魂の鳥が巨大なる精霊の王の心臓になるとき、ガオキングは完成するのです」
何とも力強く若々しい凛とした声が響く。テレビのスピーカーから聞くのとでは、その迫力があまりにも違くて驚いてしまう。
 しかもそのほとんどが一発OK。監督からも文句が出るはずもなく、予告まで収録して増岡さんのアフレコはあっという間に終わってしまった。
 そして、ガオレンジャーの面々、テトム、ツエツエたちは先程の本編録りの続きに戻った。

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 増岡 弘さんといえばやはりこのキャラクターを思い浮かべるだろう。もちろん『サザエさん』の”マスオさん”。
「実は僕はね、2代目なんですよ。でもね、1代目の3〜4倍は永く演っているんですよ。『それいけ! アンパンマン』の”ジャムおじさん”も14年くらい演ってますね。『ガオレンジャー』も視聴率が良いって聞きましたし…。僕はねツイテいる男なんですよ。本当に良い作品に巡り会えたと思います」
と、まさにマスオさんの穏やかな口調で話す。「そ、そうかい? サザエ」と、ちょっとでいいから言ってくれないかなぁ。
 作品としての『ガオレンジャー』について、さらに印象を伺った。
「主人公が獣医さんですよね。僕、動物が好きなものですからすごく惹かれたというか、やはり地球の環境、動物との共存共栄とか、子供達にも訴えたいことですね。今、ペットの扱いが非常に悪くなっています。一方ではすごいかわいがるんだけども、正常な状態でのペットと人間の関係が上手く出来ないような、閉じこめて飼うような状況が続いているので、僕はもし状況が許すならば、放し飼いをしてあげたい。猫だって外に出して自由に、そこで何かを学び、自然に返る、それが一番良いと思うんですね。僕は猫を飼っているけれど、あんまり外に出せないんですよね、怖くなってしまって。人間と動物との関わりが不正常な状態にある。そういう事を思うとやっぱり獣医さんていうその最初の設定と、この地球環境のことをそれとなく言っているこの作品に、まずは「良い着想だな」と思いました。動物と一緒に住むというか「ああ、こういうものって子供達も大人達も本当は望んでいるんだよな」と感じましたね。ですから、第1回の放送を観て、改めて思っていたよりも遙かにいろんなことを考えた作品なんだな、その根底にあるものは愛だろうな、そういうものが隠し味になっているんだろうな、と思いましたね。僕のしゃべりも、こういうものだったら自然に子供達に伝わるだろうな、と。あまり脅しや巻き込むのではなくて、やはり子供達と作品との中間点にいてナレーションができたらいいな、表現側のほうへ行っていないで中間にいて橋渡しが出来たら、そんなナレーションができたらいいなって思いました」
 増岡さんはマスオさん以上に穏やかな、それでいて力強く切々と説くように話してくれる。説得力があるのはやはりそれだけ人生の年輪を重ねているからなのだろう。

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