「よし! 形になって!」
いつの間にか金槌の音がやんでいた。いのくまカメラマンの声で、G3ユニットの3人の表情が引き締まった。動から静に映る瞬間だ。天井の格子からカメラが覗いている。モニターからは重々しい雰囲気が伝わってくる。数回のテストの後、監督が本番を告げる。
 同枠としては昨年の『仮面ライダークウガ』からビデオ撮影に切り替わり、セリフも同時に録られるいわゆる同録になってからカチンコが鳴ったあとのスタジオ内の静寂は、慣れないものにとっては結構キツイ。
「もし今ここで携帯電話がなったらどうしよう…大丈夫、さっき電源を切ったから」
と自分を落ち着かせる。
「でも、何か、そう鞄とか落としたりしたらどうしよう…。何かに足がぶつかったりしたらどうしよう…。お腹が鳴ったら…」
そんな音までマイクは拾ったりしないだろうが、不安は尽きない。そして私は身じろぎひとつ出来なくなってしまう。下手をすると息まで止めているかもしれない。それはほんの数分のことなのだが私にはとても長く感じる、そして救いの声。
「カット!」
監督のこの声をどれだけ待ち望むことか。
 長石監督はいのくまカメラマンと事前に念入りな打ち合わせを済ませているのだろう。監督はモニターの前からはあまり動かず、動きのタイミングなどの指示は役者の近くにいるカメラマンが直接する場面が多い。そしてカメラマンが監督に確認する。
「監督、これでいいですよね」
「これが、いいんじゃないですか!」
と監督の乗り気の返事。監督とカメラマンの信頼関係を垣間見ることが出来るやり取りだ。
 それでも、たまに長石監督が役者のそばまでくることがある。とても細やかな演技指導。聞き逃すまいとする役者の真剣な眼差し。こんな真剣な場面を見てしまうと、テレビの前のだらしない格好の自分が非常に恥ずかしくなる。
 そんな緊迫した撮影を見事なまでに中断させる強者がいる。
「ヘリ待ちでーす!」
撮影所上空を飛ぶヘリコプターだ。その低く響くプロペラのうねり音がスタッフの手を止めさせる。みんなで静かにヘリコプターが飛び去るのを待つ。こんなに注目されているとは、当のヘリコプターは知る由もない。


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「あたしも変な格好良くするけど、要くんもカメラ回ってないとへんな格好だよね」
足を不思議なほうへ投げ出したスタイルで出番を待つ要さんを、両腕を肩から前に投げ出したこれまた不思議なスタイルでいる瞳子さんが指摘する。
「すごいリラックスしてますよね」
とうらやましそうに柴田さんも同意する。
「でも、「本番!」って声がかかると、要くんはビシッと格好良くなるんだよなぁ。僕は気が抜けたらそれっきり戻らないから、始めからビシッとしてないとだめだし…。今日だってGトレーラーのシーン久しぶりだったんで張り切ってて。セリフも多いしワンシーンに掛けようって力入れてたら、瞳子さん「緊張してます? 固いですよ」ってクスクス笑うし。真剣だったんですよ」
「そうなの?」
と、とても信じられないと言った表情で切り捨てる。さすが瞳子さん。男性ファンはもちろんだが、その”男らしさ”に魅了された女性ファンも多いことだろう。何せこの”男らしさ”はオーディションで田崎監督からも指摘されたそうだから。
 この”男らしさ”はまずはオーディションで発揮されたらしい。プロデューサーのどんな髪型にしたいかという質問に「生えてりゃいいっすよ」って素で言い放った瞳子さん。すごい! その瞳子さん自身の性格こそ、小沢澄子の性格のベースそのものになっていると言っても過言ではない。そうそう、勘違いしないで欲しいのはこの”男らしい”はあくまで誉め言葉なのである。凛々しくさっぱりした性格の女性に憧れとともに贈る誉め言葉なのだ。そしてその彼女の口から出る歯切れのよいセリフは、かなり気持ちいい。彼女自身も気に入っているセリフ、
”男はね、気に喰うか、喰わないかで判断すればいいの!”
は、その言い方ときっぱりした態度に私もテレビの前で「おお〜! その通り!」と声を出してしまった一言だ。そしてもうひとつ”氷川くんのほうがかわいいでしょ! 大事なことよ”も捨てがたいセリフのひとつだ。結構本心が入っていたりして?
 その氷川くんにライバル心バリバリの北條 透刑事役の山崎 潤さんにも、この瞳子さんの辛口トークは容赦ないようだ。
「小沢さんにいじめられて、山崎さん「いつからこんなにいじめられキャラになったんだろう?」って言ってましたよ。でも「いじめられキャラ久しぶり」って何故か嬉しそうにしてましたけど」
柴田さんが山崎さんの気持ちを代弁する。
「普段しゃべっている時でもチクチクチクいじめてますよね?」
「うん」
そんな素直に返事する瞳子さんはどこまで本気なんだかわからない。
「G3に北條くんが入っている時の演習ルームで澄子が机を蹴るシーンがあったけど、私思いっきり蹴っちゃって監督に「そんなに嫌いなの?」「嫌いです!」って」
これまたマジ顔で言う。それじゃ本当に北條刑事役の山崎さんと仲が悪いのかと思いきや、実は三人でよく飲みに行くという、設定とは全然違う仲の良さなのだ。

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