映像に興味があったから”東映”に就職を希望したということらしいが、なぜ彼は”東映”を選んだのだろうか? 
「東映作品マニアだった時期に…」
え? 東映作品マニア? 彼はその冷静な表情を崩すことなく自分を”東映作品マニア”と言ってのけた。
「東映作品マニアだった時期にある作品を観ていたら、番組の途中でもどんどん路線変更していく訳ですよ”スポンサーの意向丸出し”って感じの路線変更。学生の分際でしたから本当は解んないんですけど、そういう風に見える訳ですよ。面白かったのにそれがどんどん無くなってどんどんダメになっていく。プロデュースっていう仕事が当時は全然解ってなかった。ただ、スポンサーとかいろんな人がいて番組が成立しているんだろうから、そういう仲立ちする人間がちゃんとしていないとダメだろうと。そんな番組を作ってしまっているようではきっと東映には人材がいないに違いないと、実際いないんだったら俺がやってもいいんじゃないか、俺がやる事もきっとあるだろうって。まあ、当時はそう思って」
そこまで東映作品の向上を考えての入社とは! 一体いつから東映作品マニアだったのだろう?
「高校生の頃かな『電子戦隊デンジマン』の再放送を観て面白いと思っていたら『宇宙刑事ギャバン』が始まってて。小林義明監督の回で車が暴走する話があったんです。ひたすらアクションしかないような回、ただ大葉健二さんがジープもどきで暴走するみたいな話ですよね。そうこうするうちに小林義明って人も去ることながら、小林演出っていうのがだんだん好きになっていって。そのうち予告の映像観るだけで次の監督が解るようになったんです、3人くらいしかいないんですけど。来週は「○○○監督だな」とか「なんだ来週、○○○監督かぁ」とかね(笑)。やっぱり『宇宙刑事』は小林演出あったればこそだと思いますからね。高校生になってから観ているから小林さんの演出はすごい面白い。こっちは薹(とう)が立っているからドラマが観たい訳じゃないですか、そうすると的確な演出のほうが大人っぽいっていうかよりドラマ指向で」
監督で作品を観ていたとは、自称”東映作品マニア”は本物だった。彼は平皿料理に箸を運び一口食べるとこう続けた。
「田中秀夫監督のファンでもあったんです。非常に的確だと思うんですよね、彼のカット割りにしても色彩にしてもカメラワークにしても。やっぱり『宇宙刑事ギャバン』と『スケバン刑事』ですかね。で、『特捜最前線』の再放送が丁度あったりして。それを観なかったら東映に入らなかったですね。田中監督の演出を観てそれで”東映”という会社を認識した訳ですよ。田中さんに限らずなんですけど東映作品だったら、面白いモノが観れるかもしれないって東映マニアになって。もう、時代劇から2時間ドラマから。すごい執着でしたね。
 『宇宙刑事』の3シリーズ終わって田中監督が『スケバン刑事』へ行って、自分も『スケバン刑事II』とかにすごくハマって。1作目も観てたんですけどね。すごいマニアックな言い方をするとね、『スケバン刑事II』の初回を学校にいたんで観そこなったんですよ。「初回、田中秀夫なのに〜」って。予告とか超期待して観てましたよ。『クウガ』の最後のときの『アギト』みたいに「今度は3人だ!」みたいな(笑)」
photoそ、そんなに好きだったとは…
「じゃあ、もちろん『仮面ライダー』にもどっぷり浸かっていたんですよね?」
彼の箸を持つ手が止まった。『ライダー』ではないのか? 少し考えてから彼は話し始めた。
「子供の頃は『ウルトラマン』とか見て…普通だと思いますけどね。普通以下かもしれない。小さい頃は地方に住んでいたんで局数が少なくて。しかもテレビが白黒テレビだったんですね。『ウルトラマン』のカラータイマーをテレビマガジンとか雑誌で見るとどうもカラーのように見えていたが、あまりピンとこなかった。実際カラーテレビで見て「本当にカラーなんだ、ダセー」って思っていたくらい。『ジャンボーグ9』が好きだったんですね。それと『ウルトラマンA』だったかな。『キカイダー01』とか『キカイダー』とかも。でもカラーテレビになってあまりのダサさに引いたっていうのを憶えていますね「こんな原色ギトギトだったのか」って。小学校1年か2年の時でした。
 小学校高学年くらいになって、自分のテレビっていうのを持ったんですね、白黒を。当時大手家電メーカーに務めていた親友のお父さんが亡くなって、退職金替わりの現物支給の製品が彼の家にいっぱいあったんですよ。それで白黒テレビをもらったんです。高校いっぱいくらいまで『宇宙刑事』とか全部白黒で見ているんで、後でカラーで見てびっくり。「そんな色だったんだ。それって、ダサいんでは?」って」
普通であることを強調する彼だがその見方、着眼点はかなりマニアックだと思える。それを本人は全く自覚していなかったのか? 煙草を吹かしながらさらに振り返る。
「アニメブームでもあったんでアニメっ子でもあったんですよ。『超時空要塞マクロス』かな?「これはすげーの始まっちゃったな」って思って。当時ビデオとか持ってなかったから、上映会があるって聞いて見に行ったんですよ。どういう訳か解らないけど『マクロス』を流した後に『デンジマン』が流れたんですね。上映会の学生さんも途中まで気がつかなくて、途中まで流れて止めたのね。その『デンジマン』がすっごく面白かった訳ですよ。それまでしばらく離れていたのにね。途中だったんで「え〜」って思っていたらテレビで『デンジマン』の再放送が始まった訳ですね。見たら無茶苦茶面白い。泣きながら見ちゃった程だから。それで『宇宙刑事』へと続くんですよ」
う〜ん、やっぱりマニアだろうそれは。
 白磁の大きめのとっくり(それこそ西遊記の金閣・銀閣がもっていそうなヤツ)に入ったマッコリが彼の目の前に置かれた。「待ってました」とばかりにみんなの器に注ぎながら
「もっとメジャーになっていいよね、これ。美味いし安いし。爽やかでしょ?」
と、味見する私のリアクションを白倉氏は先読みする。うん。確かにそんなに香りも強くないし、見た目甘酒のようだけどサラッとしていてお酒の弱い私でもいけそうだ。彼は満足そうにニッコリ微笑みマッコリを口元へ運んだ。
 そしてこの店の第2のオススメ・ユッケジャンを注文した。


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