勉強ばかりしていた中学生時代のほうが、今よりずっと大人だったと振り返る山崎さんは、現在どんどん子供返りをしているという。興味のなかったグッズなどにも最近のほうが熱くなりやすくなっているようだ。特に最近はある大きなロボットが気に入っているという。
「小学校1年生それくらいかな、みんなすごかったじゃないですか。“ガンプラ”で怪我人が出たとか、ありましたよね? 当時は「たかがプラモデルで?」と思っていたんです(笑)。そういう子供でしたね。それが最近、ザクのでかいのが発売になったじゃないですか。この前、ある役者さんの友達から電話があって「ザクが来たから見に来いよ」って。そしたらもう早く見たくて「マジで!! 行く行く行く行く!」って飛んでいきましたよ。見たらもう「これ、いいなぁ〜」って欲しくなっちゃって。で、その友達って結構飽き性なんですよ。「お前、これどれくらいで飽きる? 飽きたら頂戴」って。絶対飽きないっていう友達に無理矢理OKさせました(笑)」
かなり熱くなってます。しかも子供のころのガンプラなら500円くらいで済んだモノが、こんな高額のモノを欲しがるようになっちゃうなんて、困った大人になっちゃったんじゃないだろうか…。さらにザクの話は続く。
「この前、深夜番組であれのシャア専用が出たんですよ。しかも限定品で。そのカラーリングは、実際にガンダムのデザインをした大河原邦男さんが全部決めているらしいんですけど。でも普通そういう凝ったモノって、マニアが喜ぶ汚し塗装とかになりがちじゃないですか、けど、そうじゃなくて肩の盾とかもうピッカピカで顔が写るんですよ。すごい、もう!」
うお〜〜〜なんだこの勢いは。しかも声が裏返ったぞ。そして最後は、全身の力が抜けたようなため息が入ったこのセリフ。
「これ欲しい〜〜!」
本当に欲しい気持ちが伝わってきた。でも、決してコレクターではない、という。これは自分が出演している『アギト』に関しても言えることで、もちろん気に入ったモノは欲しいけれど『アギト』だから何でも欲しい、というのではない。それを裏付けることになっているかどうかは分からないが、こんな話をしてくれた。がしかし、その口調は先程とは打って変わって、あまり話したくないといった感じの重いものだった。あとで分かるのだが、これは彼にとってかなり恥ずかしい体験だったのだ。


写真 「…あのですね。収録でG3を装着したときにですね。マスクをはずして自分の姿を見ると、やはりひとしおっていうのがあって…」
うんうん、ありました。北條がG3を装着して出動したのは確か、第9話と第10話だった。やはりクールな山崎さんでも“ライダー”になるという偉業の重みは、じわじわとその胸を熱くしてくれたようで
「『仮面ライダー』って30年も続いている作品なわけじゃないですか、恐らくここからまた続いていくだろうし。それだけの歴史があって、更にこれからも歴史が作られていく。しかも僕みたいな子供を除く、ほとんどの子供が憧れるものに自分がなっているという、その感動がすごくて。すごいなぁ〜と思って」
これは“ライダー”になった者にしかわからない感動なのだろう。果たしてこれから何人の役者がこの感動を味わうことが出来るのだろうか。
「そんなときに、いとこが知人の結婚式で東京に出てきたんですよ。十何年か振りに会ういとこで東京を案内したんですね。そのいとこの子供がちょうど6歳くらいで『アギト』を見てくれてるんです。それでお土産にG3の銃のセットを買って行くっていうんで、表参道のキディランドに入ったんですよ。僕はそのいとこに結婚のお祝いも子供が産まれたお祝いもしてなかったんで、何かプレゼントしようと。その日はちょうど僕がG3を装着した回の放映があった日曜日で、自然と超合金のG3の装着変身セットに目が止まって。ひとつはプレゼント用、もうひとつは…「買っちゃおうかな」って、レジに持っていったんです。元々僕ってあまりテレビに出ているっていう自覚がなくて、良くないんですけど(笑)。本当にごくごく軽い気持ちでレジに。で、「あ、領収書ください。宛名は山崎で」って普通に買おうとしたら、急にレジのお兄さんが…」
といって、驚く表情を再現してくれる山崎さん。そのお兄さんはその視線を何度も、手元のG3のオモチャと山崎さんの顔とを往復させて、かなり驚いたらしい。
「その瞬間に全身の毛穴が開いて「ヤバイ!」と思いました。心臓はドッキンドッキンして暑い、暑い」
え〜っと、ドキドキしているのは店員のお兄さんのほうだと思うのですが…なんで山崎さんがそんなに緊張しちゃうんでしょう? しかもそのお兄さんは毎週『アギト』をオンタイムで見る優秀なファンだったようで
「今朝、これ着てましたよね?」
とツッコミを入れてきたそうだ。更にそのお兄さんは興奮して
「いつも見てるんですよ。店長! 店長!」
と店長まで呼んでみんなで山崎さんの来店を喜んでくれたらしい。
店員さんたちの喜びとは裏腹に山崎さんは、非常に恥ずかしかったらしく
「出演した日に、しかも自分が着たG3を買っているっていう恥ずかしさが、もう…。あれより恥ずかしいことはないですね、今まで生きてきた人生において。こんなこと言っちゃ悪いんですけど、そんなに認知されてるとは思ってなかったんです。もちろん『仮面ライダーアギト』は認知されているし、あれだけの視聴率も取っているし反響もあるけど、“北條”という役なんて「そういえば、そう言うヤツもいたか」位のものなのかなと。まさか気付かれるなんて夢にも思ってなくて。これ、本当の話なんですよ」
と本人が一番信じられないと言った感じで興奮しているが、なかなかどうして、放映当初から別の意味でも北條は着目されていたと思う。なにせ、みんなのヒーローたる“仮面ライダー”G3をいぢめる(?)キャラだったのだから…。しかし恥ずかしがっているばかりではないのが、さすが山崎さん。
「店員さんに「なんで分かったんですか?」って聞いたら「声で分かったんですよ」って。G3を包んでいるときに僕の声がして「ん?」って思って、しかも“山崎”って名前までご存じだったんで」
と、原因を聞き込みで解明した。捜査の基本?


写真  さて、東京の生活にもすっかり慣れた山崎さんの、最近のプライベートはどんなものなのか、まずは食生活からリサーチ。
「自炊はするんですか?」
「最近やるようになりましたね。『アギト』始まってからですね。ロケ弁を食べる機会が増えまして…」
なるほど、お弁当はその特性から言って、どうしても揚げ物や肉類が多くなりがちだ。どうやらそういった栄養のバランスも気になるところのひとつのようだ。
「やっぱり男のひとり暮らしだとコンビニの弁当とかだったり、行きつけの定食屋だったり。どうしても揚げ物、お肉が多くなっちゃうんですよ。だから『アギト』始まってからは体調も整えなくちゃいけないというのもあって、家で極力野菜を食べるようにしてます。焼きそばを作るのでも、もう野菜のみ。料理と言っても炒め物しか作らないですけどね(笑)。最近近くにスーパーが出来たんで、そこメチャクチャ安いんですよ。これは本当に大変な問題ですよ」
なんとも家庭的な。北條のリッチな生活が似合う山崎さんなだけに、実生活では慎ましく安い野菜を求めてスーパーへ走る姿は、想像するだけで顔が緩んでしまう。

「一時期、千切りにハマったことがあって。今まで僕は実家にいるときは、男が台所に入るなんて考えられないような生活だったんですよ。なので、自分の食事なんて作ったことなんてなくて。東京に来てひとり暮らし始めて、初めて包丁を持ちました。家事とかの手伝いはしたことなかったですから、父親がそういうのを嫌うんで。「男はするな、癖になるから」って」
そう、山崎さんは九州出身で土地柄からして男の人が台所へ入るということは、褒められるどころがむしろ怒られてしまうのだ。
 未知なる世界・台所で、山崎さんのとまどいは相当のものだった?
「何から始めて良いかさえ分からなかったですね。一応、母親には「さしすせそ」を習って来ましたけど(笑)。キャベツを買ってきたんです。ひとり分の千切りの量も分からなくて、いきなりザクザクザク切って。最初はうまくいかなくて」
そして考えた。
「これは包丁が悪いんだ、と思って今度は包丁研ぎ機を買って来て…」
やり始めたらトコトンやるって感じだ。
「ガーッと研いでから切り始めたら全然違う。徐々に「ザクザク」から「トントントン」って変わって。「お、これ結構面白いな」ってなって。まるまる1個千切りに…すごい楽しくて」
かなり千切りは楽しかったとみえ、山崎さんは嬉々として話す。
「でも…その後が大変でした」
そうだろう、そうだろう。大きな葉1枚千切りにしただけでも、お皿に乗せればそれなりの量になるのに、それをキャベツまるまる1個となると…一体どんな量だ?
「すぐ近くに後輩がいるので、呼びつけて。「千切り喰ってくんない?」って頼みました。後輩の買ってきたキュウリとプチトマトで大きなボールいっぱいのサラダにして、ふたりで食べたんですけど、それでも全然あまってるんですよ」
それは“キャベツお代わり自由”ってやってるとんかつ屋さんの厨房のような状態か? 
「初めてキャベツの千切りをつまみに酒を飲みましたね(笑)」
なんともお茶目な山崎さんの一面だ。
他にはどんな料理をするのだろうか?
「野菜がメインなんで一番多いのは、野菜炒め。もやしやにんじん、ピーマン、キャベツ、タマネギで。味付けを変えて、カレー粉を入れてみたり、豆板醤で中華風にしたり、お多福ソースで焼きそば風にしたり」
なるほど、調味料で勝負?
「調味料が増えていきますね」
と問うと
「個人的にも充実してます、北條だけでなく(笑)」
と、決して北條 透のキッチンの調味料が充実しているという根拠はないのだが、北條さんが山崎さんのプライベートにまでも進出してきていることを伺わせた。そして山崎さんの自慢の料理は…
「焼きそばですね! 僕の焼きそば美味いっすよ! もう、焼きそばは自慢の一品です」
キャベツの千切り同様かなり凝っちゃった時期があるようだ。いつも作り過ぎるという焼きそばを一生懸命食べてくれるのは、近所に住む福岡時代からの後輩達だそうだ。
「いつも作り過ぎちゃうんですよ。焼きそばもひと玉なんですけど、野菜をたくさん入れるんで、大体2人前に。やっぱり、ご飯も食べたいから米も炊いておくじゃないですか」
え? ご飯と焼きそばを一緒に食べる? 
「焼きそばをおかずにご飯を食べるんですよ。え? 何かおかしいですか?」 
すみません。私関東出身で、焼きそば+ご飯、とか、お好み焼き+ご飯、とかあまり馴染みがなくてちょっと驚いちゃいました。でも、焼きそばやお好み焼きをそれぞれ食べたら、それだけでお腹いっぱいにならないのだろうか? 西の方々は大食漢? 
「普通ですよね? お好み焼きとご飯、全然食べられますよ。何とでもご飯は食べられます」
う〜ん、特に山崎さんはご飯がお好きのようだ。
「お米大好きですね。落ち着きますね。和食派です。外では洋食が多いじゃないですか、だから家では和食。家でパンは食べないですね、お米を炊いて。揉むようにしてお米研いでますよ、こうちょっと斜めにして水切って、ちゃんと30分浸して」
おー! 米を研ぐ北條刑事! 手つきが良いせいか変な感動があった。最近は流行の“無洗米”にもTRYしたらしいが、どうも山崎さんのお気に召さなかったようだ。
「やっぱり洗ったほうがいいということを再認識しました(笑)」
そして、水が冷たくなった冬の日の今日も、彼はきっとお米を研いでいるに違いない。


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構成/すねやみえこ
(c)2001 ISHIMORI PRO・TV ASAHI・ASATSU D.K.・TOEI