| 他の映像作品がそうであるように、東映作品もまた驚く程たくさんの人達の手によって作り上げられています。その作り手達を知れば、自ずとその作品も見えてくるのではないでしょうか? そう考えると話を聞いてみたい人はたくさんいると思います。そこで、不肖未熟の身ではありますが、私が会員の皆さんに成り代わり、いろいろな方にお話を伺っていきます。今回はこの方にターゲットを合わせました。皆さんの聞きたいことが、少しでも聞き出せているといいのですが・・・・ (『仮面ライダーアギト』北條 透役)-後編- |
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窓の外はいくらか日が傾き始め、住宅街の静けさの中夕食の買い物にでも出かけるのか、自転車の後ろに小さい男の子をのせた母親がせわしなくペダルを漕いぎながら通り過ぎていった。北條とは別の意味で饒舌な山崎さんは、さらに自分のことを話してくれる。勉強が趣味だった子供時代を過ぎ、“正解のないモノ”に惹かれ始めた高校生時代はすっかり音楽にはまりこんでしまったという。ではなぜ“音楽”であり“バンド”だったのだろうか? 「もともと鼓笛隊をやっていたんですよ、小学生の頃。母親もすごい音楽好きっていうのもあったし…。何か引っかかるモノがあったんでしょうね。ラジオとかも『火曜ベスト50』をラジカセで録音して聴いたり、やっぱりバンドブームもあって…」 意外に身近な音楽から惹かれていったようだ。洋楽じゃない…固定観念の強い私はちょっと不思議な感覚に襲われ、更に念を押す質問をした。 「では、歌謡曲から音楽が好きになったんですか?」 すると彼は恥ずかしがることもなく 「歌謡曲です。「レッドツェッペリンからです! 衝撃を受けました、ある日」って、そんなのないですよ。そんな人は絶対いませんよ(笑)。きっと他のみんなも“中森明菜”とかから入ってるはずです。僕は“岡田有希子”から入りました」 そんなにはっきりと言い切るとは! しかもア、アイドル。洋楽の難しい名前が出てくるのではと、身構えていた私はホッとしたというか、あまりの意外性に吹き出してしまった。 「中学の時からドラムは始めてましたけど、高校入ってから本格的に。まあ、田舎なのでどれだけ叩いても近所迷惑にはならなくて」 確かそのドラムセットは知り合いの方からもらった? 「いとこです。本当はサックスがしたかったのに…。ピカピカ光るものが好きだったんです(笑)。はぁ〜」 と、深いため息をついた。 「バービーボーイズでコンタさんがツインボーカルでやってて、ソロでソプラノサックスを吹くんですよ。その姿にすごく憧れて。それがなぜかある日、家に帰ったらドラムセットあって。でもやり始めたらすぐにハマっちゃいましたね。ドラムっていつの時代でも不足している楽器なんです。やっぱりいろんなところから「うちでやってよ」って。そのうちに「ああ、ドラムでよかったな」って思うようになりましたね」 ドラムの良さに目覚めた山崎さんは、もちろん今も音楽活動を続けている。 「昨日もライブやって来ました。吉祥寺で先輩のバンドの手伝いを。1時間ほどのステージでした。それは割とホーキな感じです。70年代のイーグルスとかドゥービーブラザーズ、リトルフィートといった、ちょっとブルースがかったロックみたいな、そんなバンドです。みんな年上の方ばっかり、30代の方ばっかりのバンドです。そこは福岡時代からの先輩で、僕にドラムを教えてくれた人がボーカルをやってるんですよ。その先輩が唯一弟子入りをさせてくれたのが、僕で。それ以来の付き合いなので、東京出てきてからも相変わらず一緒にやってます」 福岡時代からの友人が今もずっと良い関係で続いているようだ。友人の数も多そうで、そこは北條とは決定的に違うところか。 「その先輩に「そろそろボーカルでやろうと思うから、ドラムは頼む」って。でも、スタジオ入ると結構凹むんですよ。僕がドラムを叩いていると「なんか違うんだよね、ちょっと代わって」って、ドラム叩いちゃうんですよ。僕の師匠なわけだから、僕なんかよりも上手いじゃないですか。「叩きながら歌えばいいじゃん」って思っちゃいますよ」 ちょっといじけた風に話す山崎さんは、すねてみたかった子供のようだ。そんな彼に、 「常に目標があっていいですよね?」 と問いかけてみると 「そうですよね」 と北條のフッ笑いをしたあとに 「いいんだか、悪いんだか」 と煙草を吹かしながら付け加えたが、その目は静かに笑っていた。
ドラムといえば、スペシャルコーナーに対談をアップした、葦原 涼役の友井雄亮さんもドラムに興味があったはず。「彼、「透刑事、透刑事」って寄ってきて…“透刑事”って呼ぶんですよ。「透刑事、ドラム叩いてくださいよ」って」 友井さんのモノマネをしながら山崎さんが再現してくれる。 「えぇ? だって、何もないし」 「ッツッツッタ、ッツッツッタっていうの、やってくださいよ」 またもや友井さんのモノマネを披露。 「それで「そう? じゃぁ。…あれ? 聴いてないや」みたいな(笑)」 どうやら友井さんは人なつこく山崎さんに近づいてきてドラムのおねだりをするモノの、それを聞かずにどこかへ行ってしまったようだ。撮影の合間のやりとりが目に浮かぶ。 「彼がいつかドラムをやりたいっていうのは聞いてますね。やっぱりダンスをやられるからじゃないですかね。僕もダンスは2年ほどやったことがあるんですけど」 え!? スーツ姿の北條さんがダンスしている姿が浮かんでしまった。う〜〜ん、それはちょっと…。 「友井くんみたいに踊るのが好きで、というのではなくてリズム感を良くしたいから。まあ、リズムの取り方とかを勉強したくて行ったんですけど」 な〜るほど。妙に納得したりして。 かなり音楽に真剣な山崎さん。やはり上京のきっかけは音楽だった。 「地元の九州限定でテレビ朝日系情報バラエティ番組を深夜にやっているんですけど、その中でレコード会社が主催するオーディションがあるんですが、それに応募したらトントン拍子にレコード会社との契約が決まって。それで、大学を2年の途中で辞めて上京しました。そのころは音楽活動のみですね。毎日スタジオに入って曲作って。でも、僕は将来的には芝居のほうも願望があったんで、レコード会社の人には言ってあったんですね。特に“ドラム”って日陰者じゃないですか。ライブハウスによっては、照明がドラムの前にあったりしますから(笑)。そういうポジションよりは、メンバーそれぞれにエンターティナー性があるバンドがやりたかったんですよ。それこそドラムが役者をやっている、それって面白いなっていうのがあって。でも当時は、レコード会社の人に「音楽で軌道に乗ってから」って言われてたんです。でも軌道に乗る前にバンドが終わっちゃったんです」 元々ドラム演奏だけで終わるつもりは無かった訳だ。それにしてもどうしてデビュー前にバンドが終わってしまったんだろうか? 「音楽性の違いというよりは、方法論の違いですね。僕が考えているエンターティナー性を理解してもらえないメンバーもいたし、そもそもデビュー曲に納得出来ないメンバーもいたりで。結構メンバーがレコード会社不信になっちゃって。僕は、今はこういう曲だけどそれは実績を残してないし、実績を残せば好きなことは出来る。確かに最初から好きなこと出来るのがベストだけど、今はそれだけの力もないし、それだけのクオリティーの高い音楽も出来ない。だったらある程度の部分をレコード会社に任せて、その間に自分たちで勉強して、ゆくゆくはシフトチェンジをしていく形のほうがいいと思っていたんですよ。でも、メンバーの中から「俺らは何のために音楽やっているんだよ!」という声も出て。最終的にはレコード会社の契約を切ったんです」 この“レコード会社との契約”って、音楽をやる人にはと〜っても貴重なチャンスなのでは? 「それまでは福岡の片田舎で、毎日音楽以外のことをせずに生活していたので、“レコード会社との契約”なんてもう、宝くじがあたったような感覚なんですよ。自分の未来はバラ色にしか見えない、みたいになってて。だから大学を辞めて親元も離れて、東京に出てきたのに…。そのレコード会社との契約が切れたってことは、根本的に何かをまた考え直したほうが良いのかな、って思いました。それが22歳の時ですね」 やはり山崎さんの胸中ではいろいろな想いが駆けめぐっていたようだ。そしてこれが転機となった。元々エンターティナー性を求めていた山崎さんのベクトルが、芝居の方向も模索し始めたようだ。 「芝居は事務所関係の方々からお誘いがあったんで、ちょっとやってみようかな?、順番が逆になっちゃうけど、やっちゃおうかなって。本当に最初はそんな軽いノリだったんですよ。実際に演技レッスンを初めてやって…もう恥ずかしくてしょうがないんですよ」 役者は意外と恥ずかしがり屋だったり、人見知りだったりすると聞く。ということは実は役者に向いていたのでは? 「その時最後のほうで不思議な瞬間があったんです。「あれ? 今俺セリフしゃべってたっけ?」みたいな感じになって。ちょうどすっぽりハマりこんだ瞬間が。本当に一瞬なんですけど。その時に見てた監督さんや脚本家さんに「今の感覚なんだよ、役者って」って言われて「あ、これか。軽い気持ちじゃ出来ないなぁ」って思ったんです。それからですね、芝居を本格的に始めたのは」 ジグソーパズルのピースがピタッとハマった感じなんだろうか。そして、役者・山崎 潤が誕生した。その後は活躍の場を映画にも広げた。みなさんは、気付いていたただろうか? 織田裕二さん主演の映画『ホワイトアウト』にもテロリスト役で出演されていた。しかも実行部隊というよりは、電気機器関係を巧みに操り実行部隊をサポートする頭脳系テロリスト。この“頭脳系”ってあたりは今の北條役に通じるモノを感じる。それ以外にもこの夏に公開された袴田吉彦さん主演の『カルテット』で、これまたエリートバイオリニスト役。ただのバイオリニストではない、“エリート”なのだ。 「役柄はみんな頭脳系なんですね?」 と、いたずら心を抑えきれず、ちょっと皮肉った質問をしてみた。すると 「にじみ出ちゃうモンなんですね、そいういうのって」 と、ポーズも決めてサラリと流す。さすが! 「北條さんが乗り移りましたね?」 「はははっははは(笑)」 山崎さんの高笑いが響いた。楽しい人だ。 |
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| 構成/すねやみえこ (c)2001 ISHIMORI PRO・TV ASAHI・ASATSU D.K.・TOEI |