| 他の映像作品がそうであるように、東映作品もまた驚く程たくさんの人達の手によって作り上げられています。その作り手達を知れば、自ずとその作品も見えてくるのではないでしょうか? そう考えると話を聞いてみたい人はたくさんいると思います。そこで、不肖未熟の身ではありますが、私が会員の皆さんに成り代わり、いろいろな方にお話を伺っていきます。今回はこの方にターゲットを合わせました。皆さんの聞きたいことが、少しでも聞き出せているといいのですが・・・・ (『仮面ライダーアギト』北條 透役)-前編- |
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メインストリートからほんの少し入っただけなのに、そこはとても静かでちょうど住宅街とオフィス街の境目の様なところだった。凝ったデザインの建物の中にあるオフィスにその人を訪ねて行くと、奥から聞き覚えのある落ち着いた声が聞こえてきた。テレビの印象からすれば、嫌味が込められていてもおかしくないような声なのに、その口調はテレビとは全く違い、とても普通の、極めて普通の口調だった。「初めまして。山崎(やまさき)です」 今回は、自他共に認める『アギト』内唯一の嫌われ役・北條 透刑事こと、山崎 潤さんを訪ねた。 その性格の歪み加減とは裏腹に一直線に人気が急上昇している北條刑事を、山崎さんはどう感じているのか、また山崎さんご自身は一体どんな方なのか、前後編の2回に渡りその魅力に迫ってみようと思う。 「鼻が結構弱いんですよ。ちょっと体調崩すとすぐに鼻にきちゃうんで(笑)」 開口一番こんなセリフが飛び出してきた。これはのっけから嬉しい誤算だ。風邪気味の北條刑事には、そうそうテレビではお目にかかれない(と思う)。 それでも『アギト』の収録期間中に体調を崩して、鼻炎薬のお世話になったことが1、2度あったようだ。それはオンエアでは分からない、さすがプロ。 「鼻をかむわけにはいかないですからね、透ちゃんが(笑)」 と、愛情を込めて自分の役を“透ちゃん”と呼ぶ。が、普段は北條にふさわしく“彼”と呼ぶ山崎さん。最近のこの北條人気をどう受け止めているのだろうか。 「ファンの中には、かなりコアな方が多いらしくて。でも多分、僕が一番北條を好きだと思うんです。人間ぽくっていいんじゃないですかね? 北條のことは、実は最初は嫌いだったんです…もちろん好きになろうとしてたんですよ。やっぱり自分が演る役なので、演る本人がその役を嫌いだとお話しにならないですからね。一所懸命彼の良い部分を探したりしたんですが、当初はなかなか見つからず(笑)、どうしようかなと思っていたんです。彼はやっぱり人間くさくないようで、実は一番人間くさい、と思うんですよ。敵を目の前にして逃げ出したりとか。あの回は、僕の北條 透に対する印象が変わったところですね」 的確に“彼”北條 透を分析理解しているところこそ、むしろ北條的。話し方は落ち着いてはいるモノの、北條とは全く違うが、それでもやっぱり似たところを感じてしまう。劇場版の前夜祭だったと思うが「北條は地で演っている」と語りファンを喜ばせたが、本当のところはどうなのだろうか? 「もちろん苦労はしますけどね。あのちょっと嫌味な感じであったりとか、人を見下しているところとか、自分に自信がある部分って、絶対人間誰しも持っている部分だと思うんですね。ただ、通常の人間なら表に見せないように生活している、じゃないと社会的に生活できないじゃないですか、人として。それが、彼はそのまま素直に出てると思うんです。彼は人間が持っている一部分だけをボン!と全面に出したキャラクター。僕の中にもそういう透の部分は持っているし、その部分を自分の中で多少ディフォルメして、というか引っ張り出してきて広げてって感じで演っているので、そんなに苦労というのはないですね。ただ“地で演っています”って言うのも、なんか人間的に終わってるなって気はするんですけど(笑)。 セリフとかでは苦労しますね、ツラツラツラっと説明をするじゃないですか彼は。平坦に、ひっかかる事なく。そして、北條って間を取らないんですよね。とにかく、ひたすらまくし立てるように喋るって感じだから、セリフを覚えるのは結構苦労しますね。セリフの長さや専門用語もありますが、彼は会話をしないんですよ。自分がひとりで喋ってるって感じなんで。会話なら相手とのやりとりで結構覚えやすいんですよね」 熱く語っていた山崎さんがピタっと止まった。 「くしゃみが出そうで出ないんですよね」 と、困った顔をした。なんともお茶目な。最近の北條刑事のお茶目さは案外、山崎さんの素が見えてきているからなのではないだろうか。 「石田(秀範)監督が第6話か第7話で初めていらっしゃって。撮影が終わるくらいの時にぼそっと「意外に普通のヤツだったなぁ」ってつぶやくんですよ。「どういうことですか?」って聞いたら「絶対嫌な人間だから、いじめ倒してやろうと思っててさ」って。素人じゃないんですからって思いました(笑)。困ったことに「すごい嫌なヤツだと思ってた」って真面目に言ってるんです(笑)」 なるほど、強烈なキャラクターだけにインパクトも強く、誤解もされやすいようだ。 しかしそんな北條だからこそ愛着も一塩? 「もう、愛着はメチャクチャありますよ。彼と共にあったこの1年って感じだったんで。残りわずかになっちゃったんで、ちょっと寂しさがありますよね。
自分とは別に北條さんがいるんですよ、知り合いとして。決して友達ではないんですけど(笑)。僕の中に北條がいるというよりは、もうひとりいるって感じなんです。これはちょっと不思議な感じなんですけど。だから僕は北條の話をするとき“彼”って表現を使うんです。彼は彼、僕は僕、みたいな感じのそういう付き合い的なものに、1年もやっているとなっちゃっているんですよね。『仮面ライダーアギト』が終わるって言うことは、彼と別れなければいけないと言う事ですよね、それが友人との別れとかそういう雰囲気なんですよ。彼は多分何も考えてないと思いますけどね(笑)」では、“彼”北條さんは役者・山崎 潤さんをどう思っているのだろうか? 「回によっては全力は出せない時とか、後になって「こうしておけば良かったなぁ」と思うことがあるんですけど、そう言うときは彼は「もっと思いっきり演ってくれてよかったんじゃないの」と思うところがあるんじゃないですかね。例えば小沢さんとのくだりだったら「私だったら、ああいうモノの言い方はしませんよ」みたいな感じはあるんじゃないですかね、彼は」 そう言うと、ふっと鼻で笑ってお茶をすすった。この鼻で笑った笑顔が妙に嬉しそうである。 「“彼”に友達はいるのでしょうか?」 私が尋ねると、“彼”北條を知り尽くしている山崎さんは、すぐさま 「家にペットが(笑)。熱帯魚とか飼ってそうじゃないですか。照明も間接照明とかで。部屋にブラックライトで照らし出された熱帯魚とかが居そう(笑)。話しかけてるんじゃないですか?「今日、小沢さんに蹴られちゃったよ」って」 およそ北條とは思えない甘えたカワイイ口調で、山崎さんが実演してくれた。かなりな裏設定を作っているようだ。 「結構そういうことを考えるの、楽しいんですけどね。撮影に入る前、最初はやっぱり戸惑ったんですね。北條という役を演るにあたって、周りにお手本がいないので(笑)。今まで出会ったことのないタイプで、どうすりゃいいんだろうって。結構僕ってその人はどういう子供時代を送ったんだろうかとか、そういったバックグラウンドを考えるの好きで。例えば北條だったら「大学どこかな? 東大かな? いや、違うな。早稲田?、慶応だな。幼稚舎から行ってるのかな、あいつ」とか。「実家はどこなんだろう? 東京、成城っぽいな」とか「実家が白金っていうのもありかな」とかそう言うことを考えますね。彼がどんな家に住んでいるのかとかも。ただどうしても、彼のライフスタイルを考えていると公務員の給料では成り立たない生活をしてるんですよね(笑)」 う〜ん、確かに。ついつい一緒になって考え始めてしまい 「ということは、どこか良いところのお坊ちゃんなんでしょうか?」 と私も推理。 「ですね〜。何でいつもお昼ご飯をレストランで食べてるんだろう、とも思うし。すごいレストランですよね。料理は小道具さんが作ってくれるんですけど」 そういえば、とても洒落た雰囲気のレストランで食事しているシーンが何度かあった。かなり高級そうなランチの様だがお味の程は? 「食べたことないんです! この前も食べようとしたら、氷川刑事が「北條さんがアギトじゃないんですか」って話しかけられて。「あ、また今日も食べれなかった」って(笑)。一度白ワインを飲んでいるという設定があって、榊 亜紀に襲われるころだったんですけど、レストランのシーンが尺(放映時間)の問題でまるまるカットになっちゃったんです。その時は白ワインを飲みましたよ(ニヤリ)。本当はリンゴジュースでしたけど。メチャクチャ上手くて、そのリンゴジュースぐびぐび飲んじゃいました」 時折見せるいたずらっぽい笑顔はまさに北條そのもの。目の前にいる人は山崎さんなのか北條さんなのか、時々分からなくなる。そして話は北條刑事の食生活に。
「豪勢な食事をしているのは人前だけで、ひとりで食事するときは案外質素かも知れませんね」という私の推測に 「質素かもしれないですね。プライベートは食事どうしてるのかな?」 とまたもや北條のバックグラウンドを考える山崎さん。 「意外とパスタとか自分で作っちゃいそうな…オリーブオイルとかも「今日はエキストラバージンオイルでいこう」とか言っちゃって(笑)。調味料とか、こだわりがすごいありそうですね。カレーとかも、カレー粉から作っちゃうみたいな」 と、とても楽しそう。北條刑事についてはやはり話は尽きないようだ。 |
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| 構成/すねやみえこ (c)2001 ISHIMORI PRO・TV ASAHI・ASATSU D.K.・TOEI |