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残暑が急に、まるで嘘のように和らいだ9月16日。秋がそこまで来ていることを感じさせたこの日、劇場公開が待たれる『仮面ライダー THE FIRST』に出演されるという宮内洋氏に、インタビューをお願いしてあった。
宮内氏が演じるのは、あの「立花藤兵衛」。旧作では小林昭二氏が演じた、通称「おやっさん」役だ。仮面ライダーの理解者であり協力者でもある藤兵衛を、宮内氏はいかに演じたのか……。午前中曇りだった空が、昼に入って青空へと変わっていた。 |
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取材場所である、銀座の東映本社に到着。数々のヒーローを演じてきた不世出の役者である宮内氏の前に立った。筆者世代にとっての氏は、やはり永遠のヒーローだ。緊張の内に挨拶を済ませ、早速インタビューを始めさせていただいた。
まずは、今回の出演に関しての経緯に関してお聞きしてみると……。
「マネージャーから『仮面ライダー THE FIRST』の出演以来があるけど、どうしようかと話がきたのですが、聞くと1号の本郷猛が、2号の一文字隼人が出るよ、という。それじゃぁ絶対にやらなきゃ! と思っていたら、V3は出番が無かったと(笑)。ああ、立花藤兵衛役なのか……ということでしたね」
ヒーロー作品への出演は、久々の出演となる訳ですが……。
『そうですね。スーパー戦隊Vシネマ『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』(01)以来の出演になりますか。あの時もバックに火薬の爆発があったり、トランポリンを使ってのアクションなどはやりましたが、シリーズでいえば『超力戦隊オーレンジャー』(95)の三浦参謀長役以来になりますかね」
久しぶりの現場の雰囲気などは、いかがでしたか?
「やっぱり、懐かしかったですね。それと当時と違ってアフレコではなくシンクロ(セリフを撮影時に同時に録音する)だったのに驚きましたね(笑)。この手の作品は、今までみんな必ずアフレコ(撮影後にセリフなどをスタジオで録る)だったので、ビックリしましたね。まぁ、もっともシンクロでもアフレコでも芝居は変わりませんが。アフレコの場合は、ロングの画の時に、セリフのきっかけを作るための芝居を入れたりはしていましたけど」
なるほど、現在も戦隊シリーズではアフレコが行われているが、仮面ライダーシリーズは、ビデオ撮影に移行した『クウガ』以降、シンクロ撮影が行われている(変身後などはもちろんアフレコだが)。様々な理由でフィルムからビデオへと撮影方法も様変わりした関係で、ベテランの役者さんから、フィルム時代のアフレコ作業を懐かしむ声は、よく聞かれる。さて、それでは次に、今回演じることになった、立花藤兵衛役についてお話をうかがってみよう。
「当時の立花藤兵衛・小林昭二さんは44〜45歳くらいだったのではないかと思いますが、今の私はそれよりも遙かに年上になりました。ですから立花藤兵衛役が来ても当然の話でしょうね。仮面ライダーが始まったのが35年前、V3からだと33年前になります。逆に年が行き過ぎか、という部分もありますが、今回の台本にはアクションがあるわけではないですし、懇々とその“魂“を伝えるということにおいては、年齢的には充分であろうかと思います」
仮面ライダーのヒーロースピリットを伝える役どころとして、藤兵衛という役はうってつけだということか。
「でも、もう少し他のシーンがあったとき(今回の出演はワンシーンのみだから)。例えば藤兵衛がここからここまで歩く、という芝居があったら、ただ歩くのではつまらないから、戦闘員を5人くらい出して立ち回りを入れたいとか、バイクで移動しようということにして、水たまりを3カ所くらい作って、バシャッと水しぶきを上げながら走るのを狙ってみたりとか、宮内洋としてはいろいろとやりたくなっちゃうんですね。おまえは風見志郎じゃないんだから無理を言うなと言われても(笑)。いやいや、まだまだ十分にできるという気持ちがあり、やりたくなってしまうので、それをやらないように自分の中で一生懸命押さえて……。とかく、ガンガン前面に出たいというのが俳優そのものの姿なんですが、主役を喰っちゃいけないというような部分もあって……でも、喰うも喰わないもワンシーンしか出てないんだから、どうってことないだろうと(笑)。しかし、そのワンシーンの中で何を伝えるかなんですが、ヒーロー魂とでもいいましょうか、歴代から歴代のヒーローへ、段々と受け継いでいくべきものを芝居の中で伝えていかなければいけない、と考えました。」
役者・宮内洋の存在感で芝居を喰われてしまったら、きっと主役は大変だ(笑)!
「今回の主役(黄川田将也氏)はライダーとしてはまったくの新人であり、タイトルも『THE FIRST』です。原点に返れ! ということなんでしょうが、原点に返ったときに現在放映している『響鬼』との関係はどうなるんだ、とか、しかも、今回はそれらテレビシリーズとはまた、まったく違った劇場版ということでもあり、色々と芝居については考えました」
ヒーロー役者として後輩に伝えておきたいことがある。“ヒーロー魂”と呼べるものがあるなら、それは数々のヒーローを演じてきた宮内氏なればこそ成せる伝承である。それにはこういう思いも込められているという。
昔はこういった番組は“子供番組”と言われていましたが、僕はその言い方が嫌いで、ずっと“ヒーロー番組”と言ってきました。それが今や“特撮番組”となり、ハリウッドでも日本のヒーロー作品をフューチャーした作品が数々現れました。現在公開中の『響鬼』と『マジレンジャー』の映画もベスト10のうち4位に入っています。つまり、携わった人間が真剣に作っていけば、良いものは良いと認められるんだと。尚かつ後世に残るんだということです。我々がやってきたものが、今だに皆さんの心に残っているわけです。『仮面ライダー』というタイトルにも、V3とかアマゾンとか、いろいろなタイトルがありましたが、そのタイトルが今でも残っている。それらを演じた役者やスタッフは誇りに思うし、嬉しいものだと思いますね」
そういった歴史、経験を積んできた宮内氏にしか伝えられないこともあるだろう。役者同士のそんな絆が存在するのも、またヒーロー番組であればこそ、だ。淡々と語られた、その言葉の中に込められた熱い魂を、ぜひみなさんにも劇場で感じていただきたい。
さて、撮影現場はどんな感じだったのだろうか?
「撮影そのものは、あっという間に終わってしまいましたね。黄川田くんとは挨拶もそこそこに撮影に入って終了してしまったという感じでした(笑)。撮影そのものは1時間もかかっていなかったですから」
半年前に行われたという撮影は、とてもスムーズに終了したそうだ。そして撮影は、このような演技プランで行われたという。
「長石監督に、ヒーローとなっていく本郷猛に対して、ストレートに猛に語るのではなく、<俺>=立花藤兵衛が作り上げたバイク=<魂>を、お前に譲るんだよ、という意味で、目線をバイクの方から猛へ移しながらのセリフにしたいとご提案しましたら、それを監督が快く受けてくださいました。監督とは『仮面ライダーV3』のころからずっと仕事をしていますから、とっても現場で楽しくできたし、ほんとうに、えっ何か仕事したっけ? というくらいスムーズに撮影は終わりました」
撮影の感想をとお聞きしても、あっという間で、感想を抱く間もなかったというくらい、現場は順調に作業が進んだようだ。長石監督についてさらにお聞きしてみると……。
「長石監督には『仮面ライダーV3』の時にチーフ助監督でついてもらっていて、それからの付き合いですからね。『Gメン’75』に僕が初登場の回では、一緒に香港にも撮影に行ってるんですよ。そして『超力戦隊オーレンジャー』のときに、初めて監督としてご一緒したんです。この前オーレンジャーの同窓会があったらしいんですけど、スタッフ、キャスト含めて50人ぐらい集まったらしいんですが、僕はちょっと参加できなかったんです。監督はその会に出席されていて、2回目があるのでその時にはぜひ、という話をしてたんですが、ともかく1回ゆっくり飲みましょうね、っていう話を撮影の時にしました」
33年来の付き合いということになる長石監督については、さらに……。
「長石監督は脚本も書けるので、V3当時でもそうだったんですが、やりたいこと、狙ったカットがあって、こういうことを取り入れて欲しいんだと説明すると、即、脚本を直してくれていたので、僕にとってはすごく信頼のできる監督なんです。現場での思いつきや役者の芝居の雰囲気などを大事にして、その場で臨機応変に撮影を進めてくださるんです」
この言葉からも解るように、監督への絶大なる信頼がうかがえる。共に戦ってきた「戦友」という間柄とでも言えばいいのか? 当時をふり返った宮内氏は、さらにこう続けた。
「当時はアクションなども、現場に行って地形を確かめてから判断して撮ってました。脚本に、ここで風見志郎転がる、と書いてあると、なぜ転ぶんだ? ということを考えて、じゃあ転ぶための地形はないのかとロケハンをして、それじゃあここに滝があるから落っこちてみようか? え〜替えのパンツ持ってきてないよ! なんていうように、現場でより良い画が撮れれば! ということで場所を決めていたんです。水があれば落っこちるし、崖があれば転がるし、そういう場所が無ければ穴を掘って水をためたりしてまで、肉体を使って撮影していたのが、当時の仮面ライダーなんです。私もまだ今回の作品を見ていないんですが、現在の仮面ライダーは、私たちがやっていたようなボディアクションだけではなくて、CGなどを使ってアクションもスピーディになりました。そういった当時では表現できなかったうらやましい部分は確かにあります。しかし、今回の『THE FIRST』は、今さらといわれるようなワイヤーアクションや、火薬での爆発などを使ったボディアクションを今様に巧みに取り入れており、試写をご覧になった方々が、とてもすばらしいと絶賛されていましたので、僕も観るのを楽しみにしています。この1作で終わるのではなく、第2弾、第3弾と続くことを祈ってます」
『仮面ライダー』である以上、体でぶち当たっていく、というアクションに込められた感情の発露は不可欠であろうと、この話を聞いてあらためて思った。しかし、新旧、どちらの技術が良いということではなく、要は思いが伝わるか否か、であるが。もっとも、単純に「特撮アクションファン」としては、気迫のこもったアクション=演技を観たいと切に思うのも、また素直な気持ちなのだが……。気が早いと言えばそれまでだが、第2、3弾という言葉も飛び出したので、もし、そういう企画が上がったとして、V3が登場したときには? とうかがってみると……。「それはもう、立花藤兵衛と風見志郎の二役ですよ。風見志郎は宮内洋以外ありえませんから(笑)。実際に爆発の中をトランポリンで跳んだり、まだまだやってご覧に入れますよ。バイクアクションもね」
どうです、シビレませんか? もはや役者がどうこうという話ではなく、まさに風見志郎そのもの。ヒーローを演じられた役者で、五十路を越えてなお、ここまで当たり前のようにさらっと言ってのける方が、いったいどれだけいらっしゃるのか? そしてできるのか? 脱帽である。では、バイクアクションもやる! という発言に、今回猛に託すサイクロン号に関しての感想をうかがってみた。
「まぁ。バイクだなぁと……(笑)。バイクというのは自分でまたがって、エンジンを吹かしたその音と走ったときのスピード感がない限り、見ているだけでは、やはり感じるものはありませんね。現場でスチル(写真)を撮るときに、またがってみようかという話もあったんですが、実際にまたがるのは僕じゃなくて黄川田くんなので、そういうカットはやめましょう、ということで無しにしました」
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