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2ヶ月振りのご無沙汰でした。長い梅雨もようやく明けて、いよいよビアガーデン本番の季節になりました。激気の力でビールの旨さも倍増です!(注1)
ということで、いよいよ公開が始まる「電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦」、この原稿が掲載される頃には、既にご覧頂いているものと思います。
今回の劇場用音楽の録音は、7月4日から3日間かけて行われました。
録音の前には、当然メニュー打合せ(注2)が行われますが、音楽監督の宮葉さんから送られてきたメニュー表を見ての印象は「ずっと戦ってる。戦って戦って又戦って、さらに戦って・・・」というものでした。
そのメニューの内容の一部を抜粋すると、
M−1 ゲキレンジャーの戦い
M−2 ゲキレンジャーの激しい戦い
M−3 ゲキレンジャーのさらに激しい戦い
M−4 ゲキレンジャーの最大の戦い
といった内容です。(注3)
ここ何年かの戦隊シリーズの劇場版の中でも、思い切ってアクションに徹している潔さを強く感じる内容のメニューでした。
ところで、今回の劇場版用音楽の録音は、スケジュール的にはかなり変則的なスケジュールで行われました。昨年も映画の公開時期が9月から8月に変更になったことで、テレビシリーズ用の2回目のBGM録音(注4)とのスケジュールの調整が難航しました。今年も劇場の公開日を想定してスケジュールを組むと、テレビ用の2回目の音楽録音と、映画用の音楽録音を、全く同時期に行わなくてはならないことになってしまっているのです。
これには流石の音楽制作班も困りました。いくらなんでも、テレビ用2回目音楽録音と、映画用の音楽録音を同時に行うのは無理です。
そこで、今回は、2回目の音楽録音をさらに前半・後半の2回に分けて行い、その間を縫って映画用音楽の録音を行う、という初めての試みにチャレンジすることになりました。2回目のテレビ用音楽録音で、目玉になるのが、既にテレビで登場している“スーパーゲキレンジャー”や“過激気”のテーマです。塚田Pとも相談の上、例年よりも少し早めの6月の中旬から2回目音楽録音の前半部分の仕込みに入りました。
| 注1:・・・
注2:それぞれのシーンにどのような音楽が必要かを記したものを音楽メニューという。映画冒頭のお馴染みの東映様の三角マークから順番に音楽にMナンバーをつけていく。サウンドトラック等に表記されているM−1、2といったナンバーはこの音楽メニュー上の整理番号になる。 注3:読者の皆様申し訳ありません、この表記はまったくの出鱈目です。宮葉音楽監督が発注したメニューの内容については、例年であれば年末にリリースされるサウンドトラックCDの解説書にきちんと記載されるはずなので、そちらの商品に封入される解説書をご覧下さい。宮葉さんが心身込めて作り上げた音楽メニューも、ハホの頭の中ではこの程度の理解でしかないのです。関係者の皆様、本当に申し訳ありません。 注4:これも何度か補足しているが、戦隊シリーズでは、例年、テレビシリーズ用の音楽を2回に分けて録音する。1回目はシリーズのスタートに合わせた放送開始の直前の時期に、2回目は番組の前半が終了して、後半に必要な音楽が発注できるようになる7月頃の時期に行われるのが平均的なスケジュールとなっている。 |
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同時に挿入曲の制作も進行します。
今回は、思い切って女性ボーカルでスーパーゲキレンジャーのテーマにトライしてみよう、ということでMIQさんがキャスティングされました。個人的にはザブングルの挿入曲「忘れ草」という曲で脳天を貫抜かれて以来、一度はお仕事をお願いしてみたかった歌い手さんです。(注5)パワフルなボーカルは「ダンバイン」「エルガイム」のイメージから少しも色褪せることなく、(注6)熱く燃える楽曲が出来上がったと思っています。読者の皆様にも愛唱していただけたら幸いです。そんなこんなで、挿入曲を制作している傍らで三宅さんの方では書き(注7)が続きます。そして、映画のメニュー打ち合わせが行われる直前に、テレビ用2回目の音楽録音が行われました。当然、物語のフィナーレを想定して書かれたスコアなので、激しい戦いや、最大のピンチを想定する大きな音楽が次々に録音されていきます。
その他にも、これから登場する予定のキャラクターのテーマ等も録音されました。
と、ここまで無事に仕事が終わると、音楽制作チームは一区切り付いて「さぁ!パーッと行きますか!!(注8)今年はここからさらに突貫で映画の音楽制作作業に入っていきます。2回目の音楽録音の前半部分の作業が終了した翌日には、映画用の音楽打ち合わせが行われ、三宅さんは、昨日大仕事を終えたばかりなのに、休む間もなく映画用の音楽の書きに突入したのです。流石に僕も「これはちょっと苦しいかなぁ」と思ったりもしたのですが、(注9)メニューを打ち合わせて、発注を済ますと、ディレクターは作家を信じて待つしかありません。
毎晩悶々とビールで気を紛らわせながら本番を待つのみなのです。(注10)
| 注5:特撮ファンの皆様、申し訳ありません。ハホのアニメ野郎振りが、思いっきり発揮されている人選です。
注6:しかもコロムビアでも東映様作品の歌ではない楽曲・・・ 注7:音楽のスコアを書くことを「書き」という。業界らしい省略用語である。 注8:コロムビア用語では、仕事以外の場所へ行く時に「どこに」を省略して発言する文法が存在する。ハホの場合はもちろん省略されている言葉は「飲みに」であるが、人によって様々な、場所があるようである。 注9:多分、一応気を使っている振りをしているだけである。ハホの仕事の段取りの組み方は、人間の体力や気力の限界を考慮に入れていない。仕事を頼めば、相手はコンピュータの様に動き続けるものだと思っている節がある。つい先日も、別作品のビデオ編集で何食わぬ顔をして300カット以上の新規の編集を、演出込みで一晩で仕上げさようとして、オペレーターを廃人寸前まで働かせていた。スタジオの関係者が白いタオルを投げ込んで、一旦作業を中止させ、翌日に仕切り直しをさせたそうである。(この涙無くしては語れない作業の結果は、COZX−267〜268「風の少女エミリー オリジナルサウンドトラック 交響詩エミリー・(MUSIC−DVD付き)」としてリリースされる。音楽を担当したのは宮川彬良氏で、戦隊サウンドとは趣こそ違うが、映像音楽としては珠玉の作品集であるとの評判である。音楽家宮川彬良氏のスコアと宇宙を旅する戦艦の音楽との類似性を検証しながら聴くのも劇伴マニアの密かな楽しみ、ということでアニメ・特撮ファンに待ち望まれている商品である。戦隊ファンの皆様にも是非聴いていただければ、と思う1枚(+DVD)である。)ハホの労働基準は、常識では計り知れないなにか不思議な力によって動かされてるに違いない。苦労をすればするほど、その後のビールが美味く飲める、という単調な発想が、周りにどれだけの負担をかけているのか早く気づいて欲しいものである。 注10:作家の進捗を心配するのに、ビールは必要ありません。普通のディレクターは、作家に気を使い、時々電話やメールで様子を伺いつつ本番に臨むものです。 |
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録音当日の7月4日、作業開始予定時間のスタジオには見事に書き上げられたスコアと、ホセ戦を戦い抜いたジョーの様な(注11)三宅さんの姿がありました。
映画用の音楽は、編集されたフィルム(ビデオ)に合わせて録音されるので、宮葉さんがビデオデッキを操作しながら、1曲ずつリハーサル時に画面と音楽のタイミングがきちんと合っているか、を確認しながら作業が進みます。
三宅さんは、ブース(注12)に入り、自らオケを指揮します。今回の録音は、各楽器をセクション毎に分けて行われました。
まずはヴァイオリン等の弦セクションのダビング、そして胡弓等の特殊楽器のダビング、トランペット等の管楽器セクションのダビング、パーカッションのダビング、最後にはギターのダビング、というように一度に全員のミュージシャンを集めて演奏するのではなく、データで録音されたベーシックトラックに、(注13)次々に生楽器が重ねられていきます。
これは、音楽がハードディスクレコーディングで行われるようになってからは一般的な録音スタイルになっているのだと思います。(注14)
朝早くから作業は開始されましたが、弦セクションと管セクションのダビングが終わる頃には、音楽の全容が見え始めます。中沢監督もスタジオに駆け付けて、宮葉さんが編集、アフレコ済のVTR(注15)を演奏に合わせて再生していく様子をチェックしていきます。
| 注11:あーっ!又、アニメネタに走ってるハホを止めることが出来ず申し訳ありません。
注12:スタジオでミュージシャンが演奏するスペース、ミキサーやディレクターがいる部屋と完全に仕切られている。 注13:戦隊の音楽では、ドラムやベース等のベーシックリズム、と言われるパートと、その他様々な音がシンセサイザーによって作られている。これは作家が自宅で行う作業で、全て生楽器で録音が行われる場合には、作家はとにかくスコアを書き上げてしまえばいいのであるが、このように、シンセサイザーによるベーシックトラックの作りこみも合わせての作業になると、当然仕事量は大幅に増えることになる。今回の劇場版は、特に戦闘シーンが多く、その分、シンセサイザーによる打ち込みの音も「日常のテーマ」のようなのんびりした音楽に比べると桁違いにたくさんの音が作りこまれているのである。三宅様、本当にお疲れ様でした。 注14:戦隊シリーズでも、ハリケンジャーの頃までは、録音はマルチテープにされていた。アバレンジャーの頃から、pro-toolsによる録音が導入されて、ハードディスクレコーディングが主流になってきた。技術的なことについて、ハホが記述以上の理解をしているとは思えないのであるが、音楽をテープに録音することと、ハードディスクにデータとして保存すること位の知識は一応は持ち合わせているようである。 注15:仕上げ中の本編映像、戦隊シリーズは、オールアフレコで音響が制作されるので、映画版の様に、映像に合わせて音楽を録音する場合は、実際に確認するVTRには、アフレコされた声しか収録されておらず、効果音もない状態で再生される。 さらに、CGや様々な合成作業も同時に進行しているので、箇所箇所で未完成のカットが混ざったVTRに合わせて音楽の録音が行われる。 本来の劇場作品は、映像が完全に完成してから音楽録音が行われるのが通常であると思われるが、特に劇場用アニメ作品では、音楽録音の時に、真っ白な画面に合わせて音楽録音を行うことも珍しくなくなってきている。こういう場合は、音楽作家や音楽スタッフは「この状態で音楽を録音してちゃんと、タイミング合わせられるのかなぁ、と思ったりするものだが、不思議なことに映画が完成して見ると、見事に映像とシンクロしてしまうものである。映画制作の手順で、音楽録音の後の手順がどのように変わったのかはよく分からない部分が多いが、現場が苦労していることだけは間違いないだろう。但し、今年の「電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー」については、比較的良好なスケジュールで進行しており、音楽録音もかなり精度の高いVTRで作業できたそうである。 |
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実は、監督自身がブラスバンドの経験者であることもあって、録音の現場では、スコアにイメージ、演奏の仕上がり、映像とのマッチングをチェックする、というよりも、ミュージシャンが難易度の高いスコアを次々に初見で演奏していくのをみて無邪気に喜んでいたようにも見えましたが(注16)、全体の流れが見えたところで安心して次の仕事に戻って行きました。後日聞いたところによると、この日、映画の作業は佳境を迎えており、山のような合成チェック(注17)の合間を縫って音楽録音の現場に来ていたとのことです。監督という仕事は色々大変なんだなぁ(注18)と思いました。
ということで、今回は劇場版の音楽制作の様子をお届けしましたが、お蔭様で映画の興行成績も絶好調のようです。苦労して音楽を作った(注19)甲斐がありました。読者の皆様も、2度目に劇場に足を運ぶときには、このような制作の裏話も知りつつスクリーンを見ていただければ、1回目とは違う楽しみ方が出来ると思いますので、何度でも劇場に足を運んでいただければ、と思います。
ところで、すっかりお知らせするのを忘れていましたが、先月「超忍者隊!!イナズマSPARK」が無事にリリースされました。昨年に引き続きシリーズ第2弾になる近作ですが、実は昨年こんなことがありました。一作目の完成イベントで主題歌を歌った水木さんと京都の太秦映画村を訪れた時に、塚田Pに「来年は俺も出演するゼッート!!」と宣言していました。水木さんは、「何でも口に出して言ってみると叶うものなんだ」と仰ってましたが、僕もその通りだと思います。(注20)やはり夢ややりたいことはまず口に出してみないと、前に進まないのです。(注21)今回のイナズマでは、やはり鬘を被った水木さんが、中村座の舞台で熱唱するシーンがあまりにも強烈でした。上がってきたラッシュを見て、急遽作家の山下康介氏が「超忍者隊!!イナズマ お江戸MIX」(注22)を作ってしまったほどのインパクトでした。ご本人も、自身の鬘姿にはご満悦の様子で「次は俳優として時代劇に出演するゼッート!!」と宣言していました。最後は最近音楽チームではスタンダードになった3本Z(注23)で京都ロケを締め括りました。近い将来、時代劇で水木さんの姿を見ることもあるのだろうと思いながら、来年のイナズマの主題歌はどんな歌になるのだろう等と思いつつ京都を後にしたのでした。(注24)
今回はすでに原稿締め切りを1週間ほど過ぎており、書きたいことは山ほどあるのですが、そろそろ(注25)S様に原稿を引き渡さないと行けない時間になってきましたのでこの辺りで筆を置きたいと思います。それでは次回をお楽しみに。
| 注16:監督に向かって大変失礼な物言いである。監督は、当然監督としてのチェックはしながら録音の様子を見ていたのである。
注17:撮影したフィルムに、CGや様々な素材を合成したものをチェックする作業 注18:・・・ 注19:決してハホ一人が音楽を作った訳ではない。三宅氏、宮葉氏をはじめ多くの音楽スタッフの苦労があっての成果なのである。音楽ディレクターの一部の人間には、どこかに「俺が・・・」という気持ちがある種類の人間がいるようであるが、決してそんなことはないのである。 注20:おいおい・・・ 注21:ハホの周辺には「無理を通せば道理が引っ込む」の実例が山のようにあります。それを「迷惑」という、ということを誰か教えてあげる人はいないものだろうか。 注22:オリジナルサウンドトラック COCX-34383 に収録、もちろん堀江美都子氏の歌う新主題歌、シリーズエンディングを菊池美香氏がソロで歌ったThank you〜Junバージョンも収録、さらに、今なら東映ビデオのHPでCDを注文していただいたお客様には、主題歌をダウンロードプレゼントという、不思議なキャンペーンを実施中です。 注23:昨年末から使われるようなった締めのスタイル。いわゆる3本締めの「ヨッ!」の掛け声を「ゼット!」に変えて声高々に行われる。「いよーっ、パンパンパン、パンパンパン、パンパンパンパン、ゼッート!!」という調子で、もちろんポーズはお馴染みのZのポーズで決める。水木氏本人が締めると、場は大変盛り上がり、完全燃焼感で溢れる。恐ろしいエネルギーである。 注24:当たり前のように続編がある前提で話を進めているが、続編が制作されるどうかは全く未定です。読者の皆様はハホの妙な思い込みに惑わされないようにご注意下さい。 注25:締め切りを1週間過ぎて「そろそろ」とのたまう神経が既におかしい。S様、今回も大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。 |
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