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実は、轟轟戦隊にはシリーズがスタートするときからスタッフ一同、酷く恐れていたことがありました。それは劇場版の公開が例年より1ヶ月早くなる、ということです。これは制作の現場にとっては実は大変なことで、そうでなくても、いつもギリギリの進行をしている音楽チームには(注2)耐え難いプレッシャーとなって重く圧し掛かっていたのです。そりゃあ毎晩ビールも飲みたくなるってものです。(注3)
実際に轟轟戦隊の音楽録音作業が始まって一番びっくりしたのが、主題歌の録音が佳境を向かえている1月中旬の頃、東映・映画宣伝部からあった1本の電話でした。
以下当時の会話です。(注4)
宣伝部「もしもし、東映宣伝部です。そろそろ轟轟戦隊ボウケンジャーの劇場版の特報を仕上げなければならないのですが、BGMは主題歌が良いと思っているので、すぐに主題歌をいただけませんか?」
ハホ「はぁ(…今、目の前で、決定稿になってない詞で、番組のオープニングフィルの編集用に仮でボーカルダビングしてる位の進行具合なのにいきなり映画の話されてもなぁ…)、」
宣伝部「どうでしょうか、すぐいただけそうですか?」
ハホ「…ガ、頑張ります。(注5)
と、ところで特報の音楽の話が来るということは、映像の方は上がってるんですか?」
宣伝部「あははは。テレビの本編がクランクインしたばかりで、しかも大雪続きの悪天候でロケが押しまくってるのは八木さんもご承知でしょう。素材なんかからっきしですよ。
それでも、春休み公開の作品で特報かけるには、もう作っちゃわないと間に合わないんですよ。それで、主題歌はどうですか?」
ハホ「(…今自分で、クランクインしたてで素材からっきし無いって言ったじゃん…音楽だって同じだよ…)はぁー、ともかく頑張りますよ。宜しくお願いします。」
宣伝部「それじゃあ、素材お待ちしてます。」
いやはや、漫画みたいな話です。
例年より公開が一ヶ月早まることの舞台裏には、いったいどの位こんなやりとりが交わされたのでしょうか。でも映画の宣伝部だって必死です。中身がわからないものは宣伝できないし、かといって素材が出来上るのを待っている余裕もないし…、上から下まですべてのパートが少なからずドタバタしたのでしょう。
| 注1:八木喜多で、飲み会レポートと、録音現場以外での原稿執筆による掲載が見れる日は来るのだろうか…、毎回毎回、こんな原稿で申し訳ございません。
注2:ギリギリの割には酒を飲む時間だけはたくさんあるものである。ギリギリの進行の本当の原因がどこにあるのかは、誰にもわからないのである。 注3:開き直りやがった!! 注4:若干脚色されているはずです。 注5:ハホがあてのないときにいつものたまう台詞である。これで相手を油断させておいて、大概の場合あとで大騒ぎになることが多いのである。 |
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音楽の年間のスケジュールも、今年は例年のフォーマットを大幅に変更した年間スケジュールが組まれました。戦隊の音楽現場では通常、まず主題歌と1回目のBGM録音が行われます。その後、合体ロボのテーマから何曲か挿入曲を作り、物語の後半のシリーズ構成(注6)が見えてきたところで2回目のBGMの録音が行われます。例年、新戦士のテーマや最終合体ロボのモチーフはこの録音で制作されるのです。
そして、TVシリーズの大団円を終えたところで劇場版の音楽制作にとりかかるのです。
今年は、映画の公開が一ヶ月早まったことで、2回目のBGM録音と、映画版BGMの録音が逆に行われることになったのです。そこで困ったのがボウケンシルバーのモチーフ音楽です。劇場版では、ボウケンシルバーはもうボウケンジャーの仲間として活躍しています。
けれど、音楽モチーフは2回目のBGM録音で制作される楽曲なので、それより先に劇場版の作業をするということは先にモチーフを制作しておかなければならないのです。大分作業の順番がこんがらがって来ました。やっぱり、ビールでも飲んで落ち着いて考えないと頭の中が整理出来ません。(注7)しかも、制作の段取りとスケジュールが大幅に変更になるにもかかわらず、CDは例年通りにリリースされていくのです。
| 注6:おおまかなストーリーの流れ、プロットともいう。 注7:ビール飲んだらもっと整理できないのではないでしょうか…宮葉さんを初め各音楽スタッフの苦労が偲ばれます。 |
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そういえば、お蔭様で好評をいただいている「お話」入りのサウンドトラックですが、今年は脚本を八手三郎氏にお願いすることが出来て、例年よりパワーアップした内容で皆様にお届けできているかと思います。それはさておき、今年は、このお話の収録についても例年にも増して、綱渡りなスケジュールで進行しています。ところが現場は不思議なもので、スケジュールが厳しくなってくると、「絶対に間に合わせてやる!」というわけの分からない闘志が燃え上がって来るのです。
アバレンジャーのドラマCDから、「お話」の制作で担当をしてもらっているダックスプロダクションの飯田氏もそんなタイプです。
今年も、プレシャスアルバムの作業が始まると、「お話」の制作の段取りで連絡を取り合うのですが、飯田氏への連絡は最初から過酷なものになります。
ハホ「お疲れ様です。次のゴーゴートークなんですが、マスターの工場送り(注8)は再来週の月曜日位で予定してるんですよ。」
飯田氏「…はぁ。それで、アフレコするのはいいんですけど、脚本とか出演者とかどんな段取りになりますか?」
ハホ「・・・今から東映さんに行って、八手三郎様と相談してきます。それじゃあ、今回も宜しくお願いいたします。」
飯田氏「・・・はぁ。わかりました。締め切りの日程だけ承っておきます。詳細が決まったら連絡下さい。」
というようなやり取りが毎回行われるのですが、飯田氏は、どんなにスケジュールが厳しくても、「無理」という言葉を口に出しません。確かに、顔が引きつっていることもありますが、いつも
「なんとかしちゃいましょう。」
と力強く応えてくれる頼もしいスタッフです。
僕も、飯田氏への連絡を終えると、安心してビールを飲みに行けるわけです。(注9)
大分話がそれましたが、そんなこんなで今年も楽しく(注10)進行している音楽制作チームですが、無事に劇場版とTVシリーズのBGMを納品することが出来ました。今回の中川幸太郎氏のスコアは、1回目のBGMにも増して質量の重い仕上がりになりました。当然、最終回まで使う音楽を溜取り(TV用の音楽を番組先行して録音してしうこと、劇場作品の場合は、フィルムの編集が終わってから、映像のタイミングに合わせて音楽を作り上げていくが、毎週放送されるTV作品では、その作業は物理的に不可能であるのである程度先の展開を予想して音楽を制作していく。)するので、メニューの中には、「最後の決戦!!」とか「最大のピンチ!!」とか「大勝利!!」といったテーマが盛り込まれてくるのですが、とにかく大迫力のスコアが出来上がりました。
| 注8:音源のマスターをマスタリングして、プレス工場用のマスターにまとめて工場に送ること、物理的には、発売日の1ヶ月前位の時期が目安になるが、宣伝や営業の立場からすると少しでも早い方が望ましいものである。ちなみにプレシャスアルバム2については、ゴーゴートークのアフレコが行われたのは6月の下旬で、アフレコが終わるやいなや6月26日の午前中にMA(アフレコしたものをMIXする作業が)が行われて、出来立てほやほやのマスターテープを持って、午後からマスタリングスタジオにこもり、翌朝にはマスターテープが工場に送られていった。って、確か発売日は7月20日だったはずだから、楽に1ヶ月を切っている進行スケジュールである。とても順調にとは言えない進行である。 注9:・・・もう、なにもいうことはありません。 注10:ハホ以外のスタッフがルンルンと楽しく仕事をしているかどうかは分からない。きっと必死で進行を追いかけつつ、且つ、手抜きの無い作品を作らなければならない現場スタッフのプレッシャーは相当なものであろう。 |
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去年の秋頃に、轟轟戦隊の音楽を誰にお願いするか、という相談を東映の日笠Pと始めて話したときに、日笠Pの頭にはかなり具体的に、中川幸太郎のイメージがあったようです。今回の録音を終えてみて、ひたすら押しが強くて男らしい、幸太郎節全開のBGMの数々に、日笠Pが番組の企画当初からイメージしていた轟轟ミュージックを見事に作り上げることができた手応えは十分掴むことが出来ました。
ということでいよいよ劇場公開です。(注11)
今週から、NoB&サイキックラバーがあちこちの劇場にお邪魔します。そのキャンペーンの様子(注12)は次回の八木喜多でお届けいたします。今回はこの辺で。
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注11:この原稿は8月3日に書かれているようである。更新月の前の月末が締め切りであることは当然承知しているはずなのにどうしていつも締め切りが守れないのであろうか。 注12:ってどうせ打ち上げの様子になるんだろうなぁ。 |
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