この楽曲を手掛けた時に初めてお会いした大槻ケンヂさん。
テレビで拝見している時は、やはりメイクが印象的な方でしたから、そのメイクがない状態でお会いした時はちょっと違う人のような感じがありました。
何となく“コワイ方なのかな”というイメージを持っていたのですが、お会いしてお話してみると、とても優しく、穏やかな方で、でも想いは限りなく深く、強く、純粋であるという感じを受けました。
だいたい、初めての方とお仕事をする時には、(プロフィールや今までのお仕事なども含めて)相手の方のことをいろいろと勉強させていただいた上でお会いする事にしているのですが、何か一つでも自分と共有できる要素を発見できると、その方とは分かり合える気がして、仕事もとてもスムーズに運ばれていく気がします。
大槻さんの場合も、一つは音楽的に“アコースティックな”方であったということ、それから、オリジナリティーのある方であったということが共感点でした。そんな彼のキャラクター性は、音楽的にもRIDER CHIPSとピッタリだと思い、大槻さんに「ぜひともフューチャリングボーカルとして参加して欲しい」とお願いしに行ったことを覚えています。
依頼したのは「仮面ライダー555」の2nd エンディングテーマ「The people with no name」(歌・m.c.A・T)のもう一つのカップリング曲「鞄」でした。
この『鞄』を聴いていただければわかりますが、譜面通りではなく、とにかく歌い方が押したり引いたりで、想いを抑揚に込めて「これでもか、これでもか」と、たたみ掛けるヴォーカルをたくさん感じていただけると思います。この激しくも想いを込めた歌声が、アコースティックなRIDER CHIPSのサウンドをさらにアコースティックなものにしてくれました。
もう一つのオリジナリティーに関しては誰も真似の出来ない自分を持っていらっしゃるところ・・これが、僕自身、彼と共鳴出来たところでした。
以前にもお話したかもしれませんが、早く終わる録音は(大槻さんは1時間半くらいだったと思います。)だいたい、中身が良いものに仕上がります。録音というのは基本はライヴなんですね。昔、コロムビアの洋楽にいた頃、ホールでのライヴ録音に感動したことがあり、これが、一番いいんだなと思ったことがありました。
大槻さんとRIDER CHIPSの録音はそういう「一発録りの緊張感」と「皆の呼吸を感じながら録音した」雰囲気を大事にしたもののような気がします。彼らは長年の音楽活動を通じて、他には真似のできない素晴らしい演奏を常に可能としているのです。“プロなんだから”と当たり前のように聞こえるかも知れませんが、“プロでも”演奏はできても、なかなか良い形にまでもっていくのは至難なことなのです。
コーラスに参加してくれたRIDER CHIPSとスタッフのみんなの歌声も、本気な演奏に刺激を受けたのか、いい感じでライヴ感を演出してくれました。
この曲を作る時(どの曲もそうなんですが)子供を含めて永く歌い継がれる、息の長い楽曲にしたいと思いながら作業していました。野村義男さんの曲もそういう意味で胸に響く素敵な曲でしたし、藤林聖子さんの歌詞も説得力があり、かつ心に染みる詞だったと思います。だから、オリジナリティーのある大槻さんはさらに表現者として野村さんや藤林さんに共鳴して下さり、みんなの想いを素晴らしい歌で伝えてくれたのだと思います。
この奇跡のような、すばらしいキャスティングに今更ながらに感動しています。
ありがとうございました。
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