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このシリーズも、何名かにわたって「人との出会い」について書いてきましたが、今回の白倉さんは、僕がとっても充実した内容の仕事をご一緒したプロデューサーのお一人です。 |
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白倉さんとは、「仮面ライダーアギト」の音楽製作において初めて出会い、お仕事をさせて頂くことになりました。
その昔、「超光戦士シャンゼリオン」という番組を担当されていた時にも日本コロムビア(当時)が音楽製作に携わっていたのですが、他の音楽ディレクターが担当していたため、私はご挨拶程度のお付き合いだったのでした。高寺プロデューサーが「仮面ライダークウガ」で平成ライダーの礎を築いたあとでしたので、東映さんとしても「勝負の2作目」として位置付けされた作品だったと思います。しかも、平成ライダーとしては、初めての劇場版も当初から予定されていた仮面ライダー企画。ご本人にはさぞ、重圧だったことでしょう。で、実際の作業は、例によってさまざまな打ち合わせから始まるわけですが、当初の段階から、彼の“知識の豊富さ”と“プロデューサーとしての能力値の高さ”には本当に驚かされました。 |
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以前にも書かせていただいたと思いますが、私の考えるにプロデューサー業務というものはスタッフの人選が終わった時点で、仕事の8割方は終了するものだと思っています。この点でいうと、白倉さんは私との打ち合わせでは細かいことは一切おっしゃらない方でした。打ち合わせの時に顔を合わすなり「本地さん!お任せしました!以上・・・。」と冗談ぽく語るその顔がとっても印象的でした。もちろん、その前段階で設定や作品のカラーなどについては、詳細に伝えられているのですが、そんなふうに全幅の信頼を与えて下さる白倉さんだからこそ、「我々は最高のものを提供しなければならない」と、常に前向きなプレッシャーを感じさせられる、これが“白倉マジック”なのかと思わされることしきりでした。 |
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作曲家や作詞家、歌手などのクリエィーター軍団にも「任せる」と言われた瞬間に目が覚めたように緊張感が走ります。失敗しても他の誰かのせいには出来ない、自分の全責任となる緊張感。これが、いい仕事を生むのです。そういった意味で白倉さんは大プロデューサーだなと感じさせる一面がありました。ただし、「任せっぱなし」というのではなく制作者としてのこだわりや明確な意思に関しては、頑固な顔も持ち合わせていたことも事実です。 |
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次に述べることは僕の中でとっても印象に残っている白倉さんとの共同作業のエピソードです。
あるとき、企画として「仮面ライダーアギト」のキャラクターソングアルバムを制作することになりました。当然、さまざまな登場キャラクターの歌を考えていくのですが、その中でどうしても作りたかったのが、“敵の歌”でありました。僕の中で「仮面ライダーアギト」という作品における“悪”は、人間の中にある神と悪魔のほんの一線であるという理解をしていました。神も悪魔も人間が持っている一部分で、ちょっとしたきっかけで、どちらにでも転んでしまう弱さを持っているのが人間であるという図式。白倉さんの描くアギトの中における“悪”は人間が油断をしてしまうと出てきてしまう弱さの中に存在する事物であり、神であったり悪魔であったりするのは紙一重である、と。 |
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その意味で、悪の音楽を設定する時に、以前「激走戦隊カーレンジャー」のボーゾックをジャズで表現したように、今回はどうしても象徴的に、イタリアオペラのアリアを使ってみたいと思ったのです。アギトの悪の中には先ほど述べたように人間の油断から生じる弱さを感じていましたから、逆に人間が絶好調にあるときの情景に非常にマッチすると思ったのです。その時、ふと思い起こしたのが、ヴェネチアの仮面でした。 |
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その仮面がもてはやされたのは15世紀のイタリア半島でした。ルネッサンス文化です。1300年代に人口が900万だったイタリアは1500年には500万ほどに減ってしまった。生産性の低い土地は捨てられヴェネチアやフィレンツェなど生産性の高い都市に人口が集中して所得が増え生活に余裕が出来、ガラス製品などを買う人が増え、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチが生まれルネサンス文化が花開いたわけです。
しかし、それは頂点であり、また下り坂の始まりでした。人間はそういう歴史を何度も繰り返していくのであります。 |
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そういったちょっとしたことでこわれてしまうかもしれない繁栄をヴェネチアの仮面に感じたのです。ヴェネチアの仮面は笑っています、でも、その下にある顔はゆがんでいるに違いない・・・そこにある音楽はイタリアオペラのアリアに違いない・・・そんな気持ちを白倉さんに話してみました。彼はいつもの調子で「おもしろい! やりましょう!・・・」
曲はもちろんこの作品の劇伴を担当していた佐橋俊彦氏・・・その時にすでにあった劇伴をアレンジしてもらうことになったのですが…でも・・歌詞は? どうしよう・・・イタリア語で行くべきか?と白倉さんに相談したところ・・・・「僕が作ります・・・」で、出来上がりを見てビックリ!! なんと、彼はラテン語で歌詞を作って来てくれたのです。 |
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出来上がったこの楽曲のタイトルは「もうひとつの仮面の戯曲」としました。歌手にはソプラノ歌手の白石圭美さん。とっても素敵な一曲になりました。僕はこの曲を、今でもプライベートな時間によく聴いています。
この曲を初めて聴いた時…僕はこの時白倉さんの描こうとしている世界観を思いっきり感じながらイタリアを思い浮かべていました。少し、白倉さんから哲学の香りがしていました。神と悪と人間の関係について・・・ |
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東映プロデューサー。「超光戦士シャンゼリオン」(96年)でチーフプロデューサーに。近年では「仮面ライダーアギト」(01年)、「仮面ライダー龍騎」(02年)、「仮面ライダー555」(03年)、「美少女戦士セーラームーン」(03年)、「Sh15uya」(05年)をてがける。
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本地大輔(ほんじ だいすけ)
1963年大阪生まれ。東京芸術大学音楽学部器楽科チェロ専攻卒。日本コロムビア入社。avex音楽ディレクターを経て、現在は(株)インターチャンネルに所属。戦隊から仮面ライダーまでテレビ等の中で使用される数々の楽曲のディレクションを行う。クラシックへの造詣をバックグラウンドに持ちながら、自らが求める「音による幸せ」を具現化しようと日夜奮闘中。不惑を全う出来ない40歳。
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