 |
前回登場頂いた佐橋俊彦さんは、僕が“子供達に印象に残る音楽を聴いてもらいたい”と思った時になくてはならない作曲家でありましたが、今回ご紹介する作詞家の藤林聖子さんも同じように僕にとって大事な表現者の一人です。彼女の一面についてお話してみようと思います。 |
 |
 |
| |
藤林さんと初めて出会ったきっかけはオフィス21の小澤恵美さんのご紹介でした。小澤さんとは僕が昔、コロムビアの洋楽部でクラシックを担当していた当時に、作曲をお願いした久石譲さんのマネージャーとして知り合ったのですが、その後オフィス21に移られて発掘された新人の作詩家が藤林聖子さんでした。小澤さんの新人作家を育てる熱意があってこその藤林さんとの出会いであったと言えるでしょう。もちろん小澤さんは現在も当時と変わらない熱い思いを持たれて仕事を続けていらっしゃいます。 |
|
 |
| |
藤林さんは人の心を読むことの出来る人です。面と向かって話をするだけで、相手が何を考えているかをわかってしまう人です。出会った当初はそんな特質を持っているなどとは思いもしなかったのですが、打ち合わせを重ねていくに従い、「もしかしたら」と感じることが様々起こりました。初めての打ち合わせの時です。“今度こういうキャラクターの歌を作りたいんだけど”とお願いをするにあたり、自分の物差しでキャラクターの内容やその喜怒哀楽を説明するのではなく、藤林さんに理解しやすい言葉を選んで話をしようとすると、「本地さん。本地さんの物差しで話してくださって大丈夫です。そのほうが意図がダイレクトに伝わって、私にはわかりやすいから。本地さんは無理して私に合わせて話そうと思っているでしょ。私、人の心、読めますから・・・。」と、ニコッとサラッと言われたときは本当にびっくりしました。どうしてこっちの考えていることがわかってしまったのか。“単なる偶然なのだろう”とそのときは思いましたが、また何度か言葉のキャッチボールをしているなかで、旨く伝わらなくて“どういういうふうに言えばわかってもらえるかな”と思った瞬間に「ごめんなさいね。私の理解力不足で・・・。もっともっと本地さんの言葉で話しをしてください。」と言われたりすると、再度ドキッとしてしまうわけで、今ではとにかく何も飾らないで、「心の言葉のまま」を彼女にに伝えることを心がけるようになりました。それでも彼女に驚かされる場面は多々あります。作曲家や監督やプロデューサー達が彼女に意思を伝えやすいのは彼女の人知を超えた洞察力にあるのではないか、と思っています。 |
|
 |
| |
最近、彼女を見ていて感じるのは、人は皆違う感性を持っていて、そしてその感性が「本物」であれば、自分との差異の大きさを“おもしろいなぁ”と思えるという事です。また、決して自分の感性、考え方を相手に押し付けるのではなく、その自分にはない「空白の感性」こそが、作品群の幅をひろげるのだ、ということを、最近彼女と仕事をしていて強く思うのです。 |
|
 |
| |
彼女も最近ではBoAや他社さんのR&B・ポップスなどジャンルを問わず数多く手がけるようになっていて、ものすごく忙しいようですが、僕が昔から担当している仮面ライダーシリーズとワンピースに関しては、いまだにスケジュールを都合して、かつ「人の心を読みながら」引き受けてくれています。 |
|
 |
| |
彼女とはよく前回お話した岩谷時子さんの話になります。人間は皆、自分の中に「偉大な先人たち」がいて、その人たちの話をすることはとても楽しくもあり、励みにもなり(時には自分の小ささを痛感して落ち込んだりもしますが)、無防備に心を開くようです。 |
|
 |
| |
人は「自分らしくどうやって生きていくか」を求めて、様々なワクの中でもがきながら生きていくわけですが、人の心を歌う作詩家藤林聖子さんは、常に世の中の流れを達観しながら、でも、多情多恨でいる素敵な作詩家なのです。 |
|
 |
本地大輔(ほんじ だいすけ)
1963年大阪生まれ。東京芸術大学音楽学部器楽科チェロ専攻卒。日本コロムビア入社。現avex音楽ディレクター。戦隊から仮面ライダーまでテレビ等の中で使用される数々の楽曲のディレクションを行う。クラシックへの造詣をバックグラウンドに持ちながら、自らが求める「音による幸せ」を具現化しようと日夜奮闘中。不惑を全う出来ない40歳。
|
|
|