氣がつくと、俺サーファー。
正確には、あいのりサーファー。ど長いサーフボートに2人。
前には全身日によく焼けたサーフ男が、ざんざん波に乗っている。
なるほど、ボードがべたべたしてる。簡単につるりと落ちない事は理解したが、
振るい落とされないよう必死にボードにしがみつく。
しかし慣れると、意外にもあいのりは快適だった。
・
・
・
「マイネームズ、ケン」
「お?お前!それはえーごじゃねぇか。
初めて見た、えーごってホントにあるのな。
いぇすいぇす。んとな、まい、いず、直也、だ」
「ナオヤダ?」
「うん " だ " はいらねーの、察して。日本語ダメ?」
「りるび日本語おーけー」
「あらっ、いけるくち?そうそう、に・ほ・ん・ご」
「だいじょぶよーにほんご。……カミコップ!」
「他にないの?」
・
・
・
「ナオヤダ、サーフィンすき?」
「ばか言うんじゃないよ。肌を焼いてどーするよ。
俺は専らオゾン層復活だけを願って生きているのよ。
俺は、イン・ドア、派。オーケー?」
「インドゥワハ?」
「舌を巻くんじゃないよ。R発音、嫌いなの。
それになお前、俺様はなんちゅーか、ひと昔前までは有望な……
くそぅ……ギターって英語でなんて言うんだ。。。
まいいや、あれだ、読書好きなの。
ブック。な、ブックが、好き。オーケー?」
「ヤー、ブク」
「いぇすいぇすぶくぶく。……でもなケン。そうはいっても海はな、好きだ。
なんちゅーか、うん。でっけぇしな。
それに考え事をするにはもってこいの場所だ。
海を眺めてるとな、すうっと答えが出てくるのよ。海の方からな。
昔から、海の中には母がいる、つってな」
雲間から太陽が顔を出し、間断なく全身を照らしつける。
太陽は不思議だ。この光のもとでは心の影さえ照射されるようで、
体内の暗く湿った影を、足下の影へと帰るように追いやってくれるみたいで、
太陽の、なんとも言えぬ殺菌浄化能力に改めて恐れ入った。
人生のポイントは、時に太陽なのかも知れない。
・
・
・
しばらく二人は黙っていた。
彼は黙々と体重移動を繰返し、俺は飽きることなく彼の波捌きを見ていた。
板倉健、こいつはとても、いいやつだ。
何か美味しいものを食べると元氣が出るよとケンが言い、
我々は近くの島にあがることにした。
その間ケンはもうひと波乗ってくる、みたいなことを言って沖へ出て行った。
しかし町に着くと、ものものしい雰囲気に出迎えられた。
島の住民は逃げ惑い、ねずみが駆け巡り、犬がわんと鳴く。
人々の叫び声で言葉は通じそうにないことが分かり、
何の事件かと問うのはあきらめることにした。
目についたパン屋さんに小走りで入ると(パン屋さんがある町は良い町なのだ。持論だ)、
カウンターで震えあがる店主は、何故かクロアッサンをタダであるだけくれた。
本当に良い町だ。
飲み物が欲しかったが、さすがに氣がひけたのでそのまま店を後にした。
浜辺に戻ると、ケンが何処にるのかは一目で分かった。
どでかい波を呼び集めている。あいつはサーフィンの才能があるのだな。
「おーい、ケーン。ここはすぐに離れよう。なんか事件があったらしーい。
この島、あぶないの。でりんじゃーでりんじゃー、オーケー?」
「オーーケーーイ!」
「よし、すぐに出発だ!」
|