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「最初に脚本を読んだ印象は、まず“かっこいいな”と思いました。単純に演じるのが面白そうだなと思いましたね。戦う女性ってあまり演じる機会が無いじゃないですか? だから楽しそうだなと。今回演じるにあたって、石田監督から言われたのが“女を捨ててくれ”という事だったんです。そこまでの役というのは初めてでしたから、やっぱり撮影中は何度か“女を捨てろ”と言われましたね(笑)。走るシーンなどでも、どうしても男性より見劣りしてしまうというか、遅くて当たり前なんですけど、それがすごく悔しかったんですよ。もっと速く走れないかな! と本気で思ってましたね。でも、筋肉は付きましたよ(笑)」
私生活では、どちらかというと男性っぽいと自己分析された森下さんですが、やっぱり戦う女という役どころには、様々な苦労があったそうです。そして、記者会見では石田監督から「粋に演じろ」と言われたと語っておられましたが、その辺りについてエピソードなどがあるか聞いてみると……。
「いちばん最初にそれを言われたのが、大介とふたりで戦いに行く、天空の梯子に向かうシーンで、彼が“お先に”と言って先に行ってしまうシーンがあって、そこの大介のセリフで“女は花〜”というのがあるんですが、そのシーンの時にすごく言われましたね。“おまえ何で出来ねぇんだ”って。そんなこと言われても……と思いながら演じてました(笑)。自分では“粋”にやっているつもりなんですが、でもやっぱり監督から見ると違うんでしょうね。だからOKが出たときは嬉しかったですよ。ふだん“粋”っていう事を意識したことが無かったので、演じてみると難しかったですね」
粋で且つ戦いにおいてはプロフェッショナルなキャラクターという事で、銃撃シーンなどもあり、アクションにも挑戦した訳ですが、その苦労などは如何ばかりかと……。
「銃がリアルに重くて、ほんとに右腕の筋肉がパンプアップして次の日膨れ上がっちゃうくらいでしたね。銃の扱いも難しかったです。あまりガチャガチャやっても邪魔くさいし、銃を撃ったときの反動とかも、撃ったことが無いから解らない! とか思いながら、なんとかやってました(笑)。やりすぎてもダメ、やらないのも嘘っぽいってアドバイスをもらいながら……正直、そう言われても〜と思いながらやってましたけど(笑)。やっぱりアクションになると、アクション監督を初め色々な方に教えていただきました。ふだん演じていない動きがすごく多かったので、アドバイスはたくさんいただきましたね。とにかく今回は何をやったら正解なのか、演じていて解らない事が多かったんです。そういう意味では難しい仕事でした。修羅って“漢(おとこ)”っていう、そんな感じが良いなと思って、男性陣に負けないくらいカッコつけて演じました。安全靴を履いていたんですが、慣れないので砂地のロケで足を取られて捻っちゃうんですよね。正直痛い! でも走る! みたいな(笑)」
とは言いながら、石田監督の厳しい指導にも答えを出していく森下さん。監督にお話しを聞く機会があった時におっしゃっていた事の中に、自分の魅力に気づいていない人がいるんだというお話があって、その魅力を引き出す事も、この映画での目的のひとつだったそうなんです。その中には森下さんも入っていて、今回の修羅という役は彼女にぴったりなんだと、それを表現できる魅力が彼女にはあるんだとおしゃっていました。だから「この役は難しかったけれど、楽しかったのでまたトライしてみたい」という森下さんの答えがあったのですが、それは正にそういった部分が開花した証なのではないかと思えるのです。そして、役作りについてはこんなエピソードも……。

「先ほどお話ししたように“女を捨てろ”とか、“格好良く”というのもけっこう監督からは言われましたね。疲れている様を見せるなとか、攻めの体制でいて欲しい……“逃げてるんじゃない、攻めろ!”って。人を殺しているような奴なんだから、そんな甘っちょろい目をするなっていう事も言われましたね。ネオトルーパーを指揮するシーンでは、発砲を命じたりしてるんですが……これも難しかったですね。“撃て”っていうのを脚本には“てぇー”って書いてあったんですよ。てぇーってなんだ? と思って(笑)。軍隊の人って撃てをてぇーって言うらしいんですね。だから、一生懸命“(う)てぇー!”って言ってるんですけど“てぇー”にしか聞こえないよ、命令してる感じが出てないと言われましたね」
まぁ、ふだん使わない言葉の代表のような言葉ですからね……苦労が忍ばれます。でも、楽しい事ももちろんあったという事で……
「ゼクトルーパーを殴ったりするのは楽しかったんですよ。みなさんきれいに倒れてくれるから“私ってアクション上手く見えるじゃん”っていう感じになるので(笑)。ゼクトルーパー役の方と息が合うと“決まる”という事がどういう事かすごく良く解るんですよ。だからアクションが決まった時はすごく気持ち良かったです。それが決まる時と決まらない時って、やっているとだんだん自分の中で解ってくる部分があったので、もう少し撮影していたかったですね。話も役どころも好きな作品なので、ほんとにとても楽しくできました」
いわゆる殺陣が決まるという事なのですが、決まるとさぞかし気持ちが良いんでしょうね。やっぱり強くなった気にもなるでしょうし、バッタバッタと敵を倒していくなんて、これまた実生活には無いですしね。その気持ちはよく分かります。さて、今回の映画はタイトルにもあるように「愛」がひとつのテーマになっているわけですが、修羅が懸ける「愛」とは、一体どういった事になるのでしょうか?

ただ単に男勝りなキャラクターという事ではなく、性別を超越したところでの信念というか、行動原理が森下さんには見えたわけですね。こう深く考えて脚本を読み、実際演じてみると、その楽しさもきっと増すのでしょう。役作りって楽しい! そういう感想を抱きました。しかし、そんな森下さんが、撮影の合間に“女性”に戻った瞬間があったようです。それはこんなエピソードで……。
「砂漠(砂丘)ロケの昼食時間に、通りかかったアベックさんの犬を少しの間預かっていたんです。お弁当を欲しそうな顔をするので、あげるとそれは食べるんですけど、私には懐かないんですよ(笑)。彼女は女の子の豆柴で可愛かったんですけど、男性が来るとすごく喜んで駆け寄るくせに、私が呼んでもプイッてそっぽを向くんです。写真撮るよって言っても目を合わせないし。でもメイキング撮影のカメラマンさんが来てカメラを向けると、もうめちゃめちゃレンズに向かって愛嬌を振りまいてるんですよ。“こいつ女だな”と思って、バチバチってライバル意識しましたね。やきもちを焼きました(笑)。でも、砂漠のロケでみんな疲れてるし、砂漠にオアシスみたいな感じで癒されましたね」
豆柴犬との状況を想像すると、自然と笑みがもれるエピソードです(笑)。豆柴って可愛いですもんね……。可愛いと言えば、森下さんも今回は変身してみたかったとおっしゃってましたが、そのモチーフは「蝶」。そこは譲れないんだとか。武蔵さんたちともそんな話で盛り上がっていたそうです。他にも盛り上がった事はといえば、久しぶりの東映作品で映画という事もあり、こんな盛り上がりもあったそうです。
「“お帰り”って言ってくださるスタッフの方や、懐かしい方もいらっしゃって、嬉しかったですよ。“千里ちゃん久しぶり、お帰り”って迎えてもらいました。変わってないなぁってみんなに大笑いされましたけど(笑)。あれから何年も経っているんで、大人になったつもりなんですけど……って答えたりして。丸々3年は経ってますからね。『龍騎』の時はセット撮影か、ロケに出ても近場だったんですが、今回はやっぱり現場が遠いというのが映画ならではという感じでしたね。廃墟みたいな所なので、よくこんな場所見つけられるなっていう感じでした。それに撮るスピードも妥協がないですね。天候が悪くなるとすぐ待つし、雨が降ったりすると撮影延期になったりしましたから。テレビだと時間が無いのでなんとかして撮ったり、暗くなってもライトを灯して撮ったりとかしてましたけど、そういうのは無かったですからね。やっぱり妥協してないですよね。それは思いました」
テレビ作品と映画作品との制作体制の違いに感動しつつ、こんな事にも感動したと話して下さったのは、仮面ライダーのアクションシーンを初めて見たのだそうで、それにビックリしたんだとか。仮面ライダーがリアルに戦っているところを見るのは本当にすごかったそうです。火薬の量も半端じゃないし、巻き上がる砂煙も撮影に関係ない所にまで飛んで来るので、それにも驚いた森下さん。

「『龍騎』の時は、そういう戦いの世界がある事を知らない役でしたし、ライダーの乗っているバイクを撮影所内で見たのと、これから撮影するライダーの方たちと“お疲れさまです”ってすれ違っただけだったんですよ。だから、今回の撮影ではよくあんなスーツを着て動けるなと思いましたね。しかも砂地(冒頭の砂丘ロケシーン)じゃないですか。小林さんをはじめ男性陣でも本当に撮影は大変なんですよ。そんな場所でライダーはぜんぜん平気でジャンプするし、飛び上がるし“すごいな!”と思いました。人間じゃないなと、リアル仮面ライダーだなと思って観てました。普通あんな暑い場所でスーツを着ていたら、それだけで死んじゃいますよね? ほんのちょっとした動きでも惚れそうでした。現場では“カッコイイ!!”“森下うるさい!”“ハイ、すいません!”みたいな感じでしたね(笑)。さっきお話した、大介が“お先に”ってバイクで去るシーンなんですけど、ドレイクがバイクにまたがって行くんです。その跨いだ足が地面に付いた瞬間に“ああ、カッコイイ!”って口に出てましたから。“すいません、もう一度お願いします……”って感じでした。“映ってないんだから静かにしてくれ”って叱られましたから(笑)。それぐらいほんとに格好良かったですね。何なんだろうあの動きは……? スゴイですね」
改めて考えてみれば、ヒーローだから格好良く演じているのは当たり前なんですが、あの表情のないライダーのスーツで、女性にカッコイイと思わせる芝居が出来るのって、やっぱり凄いですよね。それは石田監督が役者さんたちにアドバイスされていた“ケレン味”とか“粋”に演じるという事を、正に体現している訳ですからね。
| 構成/竹中 清(ブレインナビ) (C)2006 ISHIMORI PRO・TV ASAHI・ADK・TOEI (c)Toei Company, Ltd. All Rights Reserved. |










