


先に行われたレコーディングは実に四時間! 本当にお疲れ様でした! と声をおかけすると、
「いや、本当にお疲れ様でした! 声出ないしお腹減るし、なんかもう大変でした。その分、物凄く楽しめましたが」
苦笑を交えてそうおっしゃいました。ちょっとしたトラブルで作業に遅れが出てしまい、予定していたよりもレコーディングに時間がかかってしまったのです。
そんなご挨拶を皮切りに、インタビューを始めさせていただきました。
まずは基本ですが、理央役はオーディションだったのでしょうか?
「はい、オーディションでした。僕やジャン役の鈴木裕樹君の他にもD−BOYS(ワタナベエンターテインメント所属の若手男性俳優集団)のメンバーがいて、皆で一緒にで受けましたね。時間が合わなくて鈴木君とは別だったんですけど。理央だけじゃなくて一通りやりました。ブルーとレッドと理央。1次と2次はキャラクター全員をやるという形で進んでいました」
なるほど。しかし、荒木さんが演じられるジャンやレツは大変興味を惹かれますね。俳優オーディションではそうした形式でオーディションをやる事が多いそうです。
オーディションでの手応え、特に理央役の時などはどうだったのでしょうか?
「最終の時は、やっぱり理央って感じはありましたね。それで、これは天狗に思われるかもしれないですが……実は、ブルーと理央に関しては受けた中で僕が一番上手くできたと思ったんです。最初オーディション受けた時に2班に分かれたんですけど、僕がいた班の中で、芝居として一番ブルーと理央を演じているのは僕だと感じていました。レッドに関しては、あのテンションキャラは鈴木君が適任です(笑)。オーディションの時点からそう確信しましたね。
感覚的に凄く調子に乗っていたのもあるんですが、この時、丁度物事が凄く嫌になっていた時だったんです。何をやるにも面倒で、こう、やる気が起こらない。頑張ろう! と思えない状態でオーディション会場に行ったんです。そんな精神状態だったので緊張はほとんどせずに、僕やろう! という前向きさを持てず、呼ばれたから来ました的な気持ちでした。斜に構えてました、本当に。オーディションの中でも芝居ができている僕が受かって番組に出ても一人浮いてしまうし、芝居ができていない人と一生に仕事をしても僕にメリットは無い。そんな風に考えていた辺り、病んでいたと思います。そんな冷めた目で見てもレッドは鈴木君だという感覚はありました」
病んでいた。過去の事だから笑顔で語れる事ですが、その言葉には自然な重みがありました。
当時を振り返って、荒木さんは言葉を濁らせます。
「僕自身、本当に酷かったです。事前にオーディションではアクションの審査もありますよという話だったんですが、それを聞いた上で真っ赤なレザーのつま先が尖ったブーツを履いていったんです。その時はその靴が凄く気に入っていて、これを全面的に出そうとしたんです。ブーツの中にズボンを入れて目立たせてましたしね(笑)。
『僕何でもできますよ!』という姿勢じゃなくて、『僕は何でもできますが使いますか?』的な、それぐらいの姿勢でした。今でこそ笑えますが、今振り返ると本当に……。他のお仕事で、事務所で制作サイドの方々へ顔見せさせていただく機会もあるんですが、その時いらっしゃっていた方が、『あの子はやる気があるのか?』とマネージャーに言われていたそうなんです。『態度が悪い』、『自分が番組に出たいという気持ちが全然感じられない』。『あの子は使わない』。そうおっしゃって。そんな状態でゲキレンジャーのオーディションに受かったというのが驚きでしたね。気が乗らなかったり、落ちているのが続いてる状態の、その雰囲気が理央に当てはまったようなんです。本当に驚きでしたね。病んでいる気持ちや冷めた感覚があったから僕は受かったんだろうと。知らせを聞いた時は申し訳ない気持ちと良かったという気持ち、後ろめたい気持ちの三つがありました。本当はああいう性格じゃないのに、それで役を取ってしまったなって」
偶然が呼んだ一つの結果だった、と荒木さん。
「実はオーディションの時、理央はもっとゴツイキャラクターだったんです。『魁!!男塾』に出て来る人みたいな。だから感覚的にイメージしたのは、『北斗の拳』のラオウでした。もう今と全然違うんですけど(笑)。そんな指定があったんですが、僕を選んでいただいた理由が、僕だけゴツゴツした表現をしてなかったからだったんです。冷めた感で、俺は絶対に強い、お前らじゃ全然力及ばないよ? そんな冷めた目でヒーロー達を貶すような演技をしていました。それをプロデューサーさん達が見て下さって、ああ、こういう理央もありだなと思っていただいたようなのです。クールかつ冷めた感じで絶対的力を持っている。そういう感じで行こうと言われました」
マントを脱ぎ捨て、初めてゲキレンジャーを拳を交えた4話。
五毒拳に座り、ヒーロー達を見下す姿は圧巻でした。振り返った当時を反省される荒木さんでしたが、その時に荒木さんが病んでいたからこそ、理央というキャラクターが出来上がったのではないでしょうか。
そんな風に変化した理央を演じられて9ヶ月。演じられて来てどうでしたか?
「う〜ん。入って最初の顔見せの時にプロデューサーさんから言われたのが、『君は80パーセント魅せる芝居ができる。ただ、それじゃ足りないから100パーセントでやってくれ』という話をいただいたんです。もちろん自分は100パーセントやる自信はありました。ただ、自分が一生懸命、本当に100パーセントの力を注ぎ込んだ役だからこそ、もう3話くらいから監督とぶつかり始めてしまって。監督と僕の意向が衝突してしまったんです。
自分が考えていた理央だったら、まだここじゃ悔しがったりはしない。ゲキレンジャー達を自分が強くなる為に必要な一つの素材で、それが目に止まった、そういう表現をしたいと思ったんです。だから変に悔しがったりはしたくなかった。でも子供が見てくれる番組じゃないですか。僕がやりたい事をやったからといって、それが子供に届くかというと分からない。だから監督がここでは素直に悔しがってくれと言ったんです。でも、そこは僕にとって理央の魅力が下がるからやりたくない。そういうところで思うようにいかない日々でしたね。
でも僕らのような素人が考えた事よりも、長年監督としてヒーローを撮って来た方々のおっしゃる事が正解じゃないですか。100パーセントでやるが故にそうした監督の演出面でずっと悩みました。話が進めば進むほど、僕が魅力と思っていた理央の部分がドンドン変わっていってしまう。何でこんなに短気なんだろう。何でこんなに周囲に流されるんだろう。何でこんなに周りの意見をホイホイ聞いちゃうんだろう。それが凄く悔しくて辛くて。本当に辛かったですね」
『本当に辛かった』。そう口にされる荒木さんの表情はとても厳しく苦いものでした。自分が演じたい理央と周りが演じるように求める理央。その差のギャップに苦しめられたのが一目で分かる表情。
その症状が酷くなったのはどこからかと訊ねると、初期中の初期であったという返答をいただきました。








