
ところで、そもそも『メガレンジャー』で悪役をすることに抵抗はなかったのだろうか?
「最初はね『子供番組か…』って感じだったんですよ。でも、ちょうどその頃うちの子供が小さかったので、子供が喜ぶだろうなっていうのでやってみようと。で、やってみたらおもしろかった。どっちかって言うと若い頃はね、変質的な犯人とか多くて。こんなにのんきなおじさんじゃなかったんですよ(笑)。気持ちの悪いような、変わった陰湿な役ばっかりだったんで、子供番組で明るくっていうのが僕には合わないなと思っていたのね。でも、自分の子供のため、やってみようかなと思って 。実際子供は喜びもしたんだけど、それ以上に自分もおもしろかった。そこから見方はだいぶ変わりました。自分の中の価値観とかも変わりましたね。ただ、役者としてそれを境に大きく変わったとか、なかなかそうではないですね。変われない(笑)。変われると良いんだけど(笑)」
では、『メガレンジャー』後の役どころに変化はなかった?
「年をとったのとタバコをやめたりしたので、こういう風(ちょっとふっくら)になりましてね、そういう役(痩せこけてちょっと病的な役)は来なくなったんですよ(笑)。社長とか重役とか、大学の偉い学者とかね。どっしりとした役ばかりになっちゃった。ただ、元々僕は『こういう人間なんだけどな、こういう役をやりたいんだけどな』と思っていても、受け取る側、見る側の人が、そうじゃないと見ることのほうが多いんですよ。自分の中にはそんな要素は何もないんだけど、何故かその役が来るというほうが多い。そう見られちゃう。僕はずっと昔からアルバイトするのからひっくるめて、肉体労働系の仕事のほうが多かった、だけど実際に来るのはインテリの役がやたらと多いんですよ。大学教授であったり、学生の役でも研究に没頭してる役とかね。陰湿な役とか、なんだかそちらの役ばかり来る。求められれば期待してくれているんだからなんとかそうしなきゃと思って、そちらのモードへ入って行く。 それでずっとやってきたから。僕だけじゃないと思うけど、役と出会うっていうのは難しいね」
しかし、そここそが役者を続ける魅力でもあるのでは?
「魅力でもあるんでしょうね。僕とまるで反対で、『僕はこういうのしかやりたくない。仕事が来ても来なくていいから僕はこういうキャラクターでやる』って言って、ずーっとやり続けて大きくなって行く人もいるんでしょうけど、そこら辺が微妙に難しいところ。でも僕は最初に言ったみたいに、自分で自分のキャラクターが分からないんですよ(苦笑)。頂いた仕事を、向こうが『こんなのができるんじゃないかな』と思ってくれた仕事を、一生懸命そうなるようにやらせてもらう、それだけかな」
そしてそのスタンスはこれからも変わらないという。
「今までそれで来ちゃったからね(笑)。今からこれしかやりません、って言っても『ああ、そうですか』って言われちゃう(笑)。今と変わらずこのスタイルでやっていこうかなと思っています」
おっと、いけない。森下さんのヒーローを伺わねば。子供の頃はどんな番組で楽しんだのだろう。
「僕が一番好きだったのは、『鞍馬天狗』かな? もちろん映画の。田舎育ちなもんだから、映画はあまり…盆と正月くらいしか見に行けないでしょ? 公民館に巡回映画が回ってくるんですよ。敷布を大きくしたようなものをスクリーンにして、公民館の後ろのほうから映写機を回して、っていうのが街を回ってくるのね。そういうので来るのが大体、アラカン(嵐寛寿郎)さんの『鞍馬天狗』だったり、そういう時代でしたからね。みんな最後に鞍馬天狗が出てくると『うわー!』って手を叩く。『待ってました!』みたいなことになるわけですよ。そのワクワク感っていうのはやっぱり、映画館でシーンとして見るのと違っておもしろいですよね。その後は当時中村錦之助さん後の萬屋錦之助さんの『紅孔雀』とかそこら辺かな? 一生懸命見てましたね。あとは『月光仮面』だったり『隠密剣士』だったり。『ウルトラマン』とかになると、僕はもう大人になっちゃっているから、そういうのはあまりないですよね。漫画なら『鉄人28号』とか、そっちは多少あるけど」
当然、普段の遊びもチャンバラごっことなるという。
「風呂敷で頭巾を作るのはうまかったですよ(笑)。真四角の風呂敷でここ(目の部分)を開けてうまく被るんですよ。今はもうどうやったか覚えてない、できないけど(笑)。不思議とみんな斬るというよりも斬られたがるんですよ。斬られてこうやる(のたうち回る)のが好きなんですよ。散々苦しがってね(笑)。僕は斬るよりもそちらのほうが好きでしたね」
なるほど、役者を志す以前から斬られ役に関しては筋金入りだったわけだ。
「それがきっとお芝居の最初なんでしょうね。電柱の影に隠れてみたり、後ろから人が来ないかふり返ってみたりね、そんなのばっかりでしたよ(笑)。今から考えると、勉強するよりそれが楽しかったんだから、きっと嫌いではなかったんだろうな、と(照笑)」
それが高じて役者になろうと思ったのかと思いきや、意外な経歴が分かった。
「まさか、役者になろうとは思わなかったんですけど……。高校3年生の時学校を首になってね(苦笑)。田舎にいると悪い友達も多いから、東京へ出なさい!と言われて、寿司屋の板前になるために修業に出たんです。そしたらその店が年中無休の店だもんだから、従業員同士の休みが合わなくて。田舎から出てきて友達いないでしょ? 休みって言われてもどこに行ったらいいのか分からない(笑)。で、まず友達を作りたいなと思って。サークル劇団みたいなところの募集があったんで、友達を作ろうと思って入った。そこでたまたま撮った写真がテレビ局の監督の目に留まって、一度会いたいって言われてそこからです、出発点は」
もしかしたら今頃銀座辺りで、腕の良い寿司職人になっていのかも?
「寿司屋の修行はかれこれ2年近くやったのかな? メチャクチャ忙しい店だったんですよ。普通の店で10年くらい修行してからさばく魚も、1年くらいでさばいちゃう。ものすごく忙しい店だったので、そこそこできるようになりましたね。魚はマグロ以外はさばけますね(笑)。マグロはデカイからね(笑)」
その腕前は現在の趣味である料理に活かされているので、心配ご無用。そして、寿司職人を蹴ってまで役者を志したきっかけは、
「その当時の“平凡”だとか“明星”だとかに載っている萬屋(萬屋錦之助)さんだったり裕ちゃん(石原裕二郎)だったりを見て、『うわ! すごい車をもっているんだな』とかそういうのですよ。俺もスターになれるんじゃないかとふと思っちゃうのね。特に監督に声を掛けてもらったっていうのもあるので。その監督に相談に行ったら『できるんじゃないか』って言ってもらっちゃったんで、その気になっちゃった(笑)」
その監督、大当たり!
「ダメですよ(照笑)」
と、謙遜する森下さん。夢を諦めず、継続は力なりを身をもって教えてくれる役者さんだった。意外な一面も見せてくださってありがとうございました。今後の戦隊シリーズでも是非ともお顔を見せてください。
■profile
もりした・てつお…1945年3月2日生まれ。魚座。愛知県出身。血液型B型。身長172cm。特技:三河弁、空手。趣味:料理。
時代劇、サスペンス、あらゆるジャンルの多くのドラマ、CM、映画に出演するベテラン俳優。『電磁戦隊メガレンジャー』で悪の幹部・ドクターヒネラーを好演。我々特撮ファンにその存在を印象づけた。
●レターのあて先:〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-21-8ファミール新宿グランスィートタワー902 イイジマルーム 森下哲夫宛
●公式サイト:
http://www.iijimaroom.co.jp/







